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とてもかっこいいので、EPOの動画を見てください!

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“欧州発明者賞”European Inventor Award 2017についての動画集がEPO(欧州特許庁)からYoutubeにアップされていました。そのURLは以下の通りです。
 
 
 17本の動画があって、そのうちの15本が15人の受賞者(発明者)を紹介する内容となっています。発明の紹介や発明者のインタビューが主体で、ありきたりな内容なのだろうなと思っていたのですが、完全に裏切られました。どの動画もクオリティが高く、また主人公である発明者もやはりかっこよく演出されています。そのため、全動画を見てしまいました。発明者は偉大でかっこいい職業なのだと思わせられる動画ばかりで、発明者をサポートする立場の弁理士として誇らしく感じる動画です。子どもたちに是非とも見てほしいなあと思います。
ただ残念なことがあります。それは、どの動画も視聴回数が数百回程度に過ぎないということです。各動画はプロ(それも一流の)が作ったもので相当な予算がつぎ込まれていると予想されます。とても高額なEPOのOfficial Feeが無駄とならないように、みなさんにもっとEPOの動画を見てほしいと思います。
 EPOのOfficial Feeが高額なのをぼやいているのではなく、純粋にいいものだと思うのでたくさんの人に見てほしいと思います。
 
今回の記事で言いたいことは以上です。
 
ただ、せっかくなのでEuropean Inventor Awardについて解説しておきます。
ホームページによると、European Inventor Awardというのは、ヨーロッパで最も権威あるイノベーション賞の1つだそうです。2006年から毎年1回ずつ表彰が行われおり、技術進歩、社会開発、経済繁栄、雇用創出への貢献に基づいて審査が行われるようです。
表彰のカテゴリーは5種類あって、以下の通りです。
・大企業の発明者部門
・大学や研究機関の発明者部門
・非EU諸国の発明者部門
・中小企業の発明者部門
・生涯(長期間)貢献した発明者部門
各部門3人ずつ計15名の発明者(共同発明者)がファイナリストとして表彰を受けるようです。2017年のファイナリストは以下の通りです。日本にも出願している発明者も見えますので、google patentsなので検索して日本語公報を読んでみるとよいと思います。2017年だけかも知れませんが、受賞者の技術分野がライフサイエンス分野に偏っているように感じました。
○2017受賞者リスト 
・Hans Clevers (NL)
・James G. Fujimoto (US), Eric A. Swanson (US) and Robert Huber (DE)
・Gert-Jan Gruter (NL)
・Waleed Hassanein (USA)
・Gunter Hufschmid (DE)
・Laurent Lestarquit (FR), Jose Angel Avila Rodriguez (ES) and team
・Lars Liljeryd (SE)
・Steve Lindsey (UK)
・Elmar Mock (CH)
・Sylviane Muller (FR)
・Rino Rappuoli (IT)
・Adnane Remmal (MA)
・Giuseppe Remuzzi, Ariela Benigni, Carlamaria Zoja (IT)
・Axel Ullrich (DE)
・Jan van den Boogaart (NL) and Oliver Hayden (AT)
 すでに2018年のノミネートをオンラインで受け付けており、日本の発明者も非EU諸国の発明者部門の受賞対象になります。なお、『高等学校、高等専門学校、及び大学生等の知的財産マインドを育てる』ことを目的とする日本特許庁開催のパテントコンテストとはだいぶ性質が異なる点に注意が必要です。European Inventor Awardの詳細については、こちらを見てください。
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日本における人工知能関連技術の特許出願は米国と比較して遅れているって本当?

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 本当でした。少なくとも件数では。


 人工知能関連技術の開発競争では、米国企業が突出して進んでおり、日本企業は遅れをとっている。多くの人はこのような印象を持っているのではないでしょうか。でもこれは本当でしょうか?多くの人がAと言っていても、本当はBかもしれないと考える傾向にある私は自分自身でこの印象が正しいか検証してみたくなりました。私は特許業界で仕事をしてますので、特許出願の統計からこの印象が正しいかどうか探ってみました。具体的には、人工知能関連の技術を示唆するワードを含む明細書の公開件数を日米で比較してみました。
 以下の棒グラフは(公開年ANDキーワード)で得られたデータの統計です。検索にはJ-PlatPatとUSPTOのPatent Application Full Text And Image Databaseを使用しました。例えば、米国であれば、公報全文にartificial intelligenceが含まれる2001年公開の出願を、(PD/1/1/2001->12/31/2001 and SPEC/” artificial intelligence “)というパラメータで検索しました。


 図1はニューラルネットワーク、図2は人工知能、図3は機械学習、図4は強化学習がキーワードです。日本出願の検索結果は、以前のエントリでの統計を流用しています。各グラフで横軸は公開年です。左縦軸は検索された件数(棒グラフ)を示しており、右縦軸は検索された件数を全公開件数で除した値(折れ線グラフ)を示しています。特定のキーワードを含む明細書の件数が各国企業の技術力を反映しているという短絡的な結論にはならないと思いますが、少なくとも各国での技術開発の動向や開発競争の熾烈さ等は分かるかと思います。
 どのキーワードでも、公開件数は米国における件数が日本における件数を大幅に上回っていました。例えば、2016年においては、ニューラルネットワークで6.4倍、人工知能で22.5倍、機械学習で8.7倍、強化学習13.7倍も多くの出願が米国において公開されていました。どのキーワードでも米国では近年顕著に件数が伸びていますが、日本において件数が伸びていえるキーワードは機械学習のみでした。
 機械学習というキーワードを含む日本出願の公開件数が近年顕著に増加しているのは確かであり、人工知能関連技術の特許出願ブームが起きていると考えられることは以前のエントリで述べましたが、米国出願と比較すると規模が極めて少なく、双方を同じグラフにプロットするとブームなのか否かわからないレベルです。
 15年ぐらい前、日本の企業は特許出願件数で他国の企業を圧倒していると言われていましたが、人工知能関連技術については、2008年の景気後退以前から米国における公開件数が日本における公開件数を圧倒しています。そして、近年ではより顕著に差がついています。日本企業は米国出願もしていますし、日米の公開件数の差が日米企業の開発力をそのまま示しているとは言えません。また、特定のキーワードを含む明細書の公開件数だけで多くを語ろうとは思いませんが、少なくとも、人工知能関連特許の主戦場は日本ではなく米国であることは確認できたように感じます。人工知能関連技術の開発企業は、有望技術が開発された場合に米国に出願するのが原則なのでしょうか。

 日米の公開件数に圧倒的な差がついているので、このような圧倒的な差を認めたくない気持ちから、各年の検索結果を各年の全公開件数で規格化してみました。近年、日本では年間出願件数が減っており、米国では増えています。図1~図4における米国での公開件数の増加と日本での公開件数の低迷は、年間出願の増減である程度説明できるのではないかと考えたわけです。そこで、検索された件数/年間公開件数を年毎に算出し、折れ線グラフとしてプロットしました。ところが、やはり日米の件数に圧倒的な差がありました。例えば、機械学習を含む明細書の公開件数/年間公開件数を2016年で見てみると、米国では0.018であり約2%もありますが、日本では0.0034であり、たったの0.34%でした。人工知能関連技術が全産業の中で占める地位が日米では大きく違うことが分かりました。

 以上のように日米で比較すると、日本においては人工知能関連技術の公開件数が米国より圧倒的に少ないことが分かりました。そうすると、将来的に米国で特許になっている技術の多くが日本で特許になっていないという状況になるように思えます。この場合、日本で国内限定のサービスを提供する限り、非権利者が比較的自由に活動することができ、米国でサービスを提供する場合と比較して非権利者に非常に有利ですね。
 日本はデフレに苦しんでいますが、それでもまだGDPが世界3位の国です。このような市場規模の大きい国で人工知能関連技術の特許網が手薄な状況は、今後も続くのでしょうか。あるいは、日本においても人工知能関連技術の出願が増加していくのでしょうか。出願統計を定期的にチェックしたいと思います。

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STAP細胞の米国特許の審査状況(Final OA後のInterview)

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 週末(7月15~17日)の間にブログを書こうと思っていたのですが、運悪く特許庁のJ-PlatPatがメンテのため使えず、書こうと思っていた記事に必要な情報を入手できない。他にも週末にJ-PlatPatを使ってやることがあったのですがそれもできない。ちょうど、有料の特許データベースの契約を検討中だったのですが、そちらが加速しそうな感じです。

 気を取り直して、J-PlatPatが使えなくても書ける記事を急遽模索してみました。ちょっと安易ですが、日本の特許データベースがだめなら米国の特許データベースを使って書ける記事にします。

 今回は、STAP細胞の米国特許について取りあげます。STAPというのは、刺激惹起性多能性獲得(Stimulus-Triggered Acquisition of Pluripotency)のことで、少し前に大いに話題になったものです。

 あのときは論文の内容の信憑性が話題になりましたが、もちろん特許出願もなされており、米国や日本も含めて9か国に出願されているようです。STAP細胞についての米国特許出願(14/397080)の状況をUSPTOのPAIRで調べたところ、このような記録(重要なイベントのみ抜粋)となっていました。

10-24-2014 Transmittal of New Application
01-08-2015 Preliminary Amendment
07-06-2016 Non-Final Rejection
01-06-2017 Affidavit-traversing rejections or objections rule 132
01-06-2017 Applicant Arguments/Remarks Made in an Amendment
05-18-2017 Final Rejection
06-30-2017 Applicant Initiated Interview

 最初の拒絶理由通知に応じて意見書と発明者(バカンティ氏)の宣誓供述書が提出されました。しかし、審査官の心証は覆らず、2017年5月18日にファイナルの拒絶理由通知が出されました。
 最初とファイナルの拒絶理由通知で審査官が使用した根拠条文は以下のものです。

【35U.S.C.112】(a)The specification shall contain a written description of the invention, and of the manner and process of making and using it, in such full, clear, concise, and exact terms as to enable any person skilled in the art to which it pertains, or with which it is most nearly connected, to make and use the same, and shall set forth the best mode contemplated by the inventor or joint inventor of carrying out the invention.

【35U.S.C.101】Whoever invents or discovers any new and useful process, machine, manufacture, or composition of matter, or any new and useful improvement thereof, may obtain a patent therefor, subject to the conditions and requirements of this title.

【35U.S.C.102】A person shall be entitled to a patent unless

(b) the invention was patented or described in a printed publication in this or a foreign country or in public use or on sale in this country, more than one year prior to the date of the application for patent in the United States, or

 審査官はSTAP細胞の論文が取り下げられたことや否定的な再現試験の結果を当然知っており、112条(明細書が実施可能要件を満足しない点)と101条(発明がうまく働かない結果、有用性が認められない点)について突いてきています。これだけ発明の再現性(反復可能性)について否定的な状況だと見過ごすわけにいかなかったのでしょう。こういう事件を担当する審査官は大変ですね。

 ちなみに、私が担当した案件で一度だけ日本の審査官に『このような発明品は実在しないから発明が不明確であると』と指摘されたことがあります。出願人もまじめに出願しているのだから『実在しない』なんて失礼にも程があると憤りを感じましたが、証拠写真を提出して『本当にあるよ!』と反論して済ませました。バカンティ氏の宣誓供述書も概ね『STAP細胞は本当にあるよ!』という内容なんだと思いますが、簡単には信用してもらえないということのなでしょうか。

 話をSTAP細胞の拒絶理由通知に戻すと、102条についてはiPS細胞の中山先生の特許(MEF細胞を毒素(toxin)に曝すことで多機能細胞が生成できるとの記載)が引用されています。ちなみに最後に行われたメインクレームの補正は以下の通りで、哺乳動物体細胞に与えるストレスの一つとして毒素(toxin)を含んでいます。

  1. A method to generate a pluripotent cell, comprising subjecting an isolated mammalian somatic cell to a stress, wherein the stress is an environmental stimulus selected from the group consisting of
                  trauma, mechanical stimuli, chemical exposure, ultrasonic stimulation, oxygen-deprivation, radiation, exposure to extreme temperatures, dissociation, trituration, physical stress, hyperosmosis, hypoosmosis, membrane damage, toxin, extreme ion concentration, active oxygen, UV exposure, strong visible light, deprivation of essential nutrition, or and unphysiologically acidic environment;

    and selecting a cell exhibiting pluripotency.

 以上のようなファイナルの拒絶理由通知の後のイベントとして、ついこの前の6月30日に『Applicant Initiated Interview Summary (PTOL-413)』というステータスが記録されていました。このInterview Summaryを見てみると、以下のような記載となっていました。

Applicant’s representative discussed the retracted publication by the applicant’s and potential narrowing claims.  The examiner agreed with that the narrowing claims might overcome the enablement rejection depending on how much the claims narrowed and what is in the specification.

 電話インタビューの結果、クレームを減縮することにより拒絶理由が解消し得ることに審査官が同意しているようです。102条についてはクレーム減縮が有効であるように思います。しかし、112条と101条の拒絶理由の適否は、STAP細胞の再現性にかかっており、クレーム減縮で解決できるような質のものでないように思います。また、電話インタビューの記録にあるように、拒絶を克服できるか否かは『depending on・・・what is in the specification』となっています。いまさらニューマターを導入することなく、明細書の記載をどうにかできるのか疑問に思います。

 どのようにクレーム減縮がなされるのか、本当にクレーム減縮で拒絶理由を解消できるのか非常に気になるところです。

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google アシスタント

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google アシスタントを試してみました。

 

 最近自分のスマートフォンでgoogle アシスタントが使えるようになりましたので、少し試してみました。
 google アシスタントは、音声または文字によって質問を入力すると、google先生が回答を返してくれるプログラムです。スマートフォンの場合には音声入力を手軽に利用できますので、音声入力を使いながらgoogle アシスタントを試してみました。
 質問を音声で入力してみたところ、ほぼ完璧に入力文を認識しました。もはや音声認識精度に驚く時代ではないのかもしれませんが、実際に試してみると、ものすごく高い精度にやっぱり驚いてしまいます(ただし、例外もありました)。

 「日本の面積を教えて」、「特許って英語でなんていう?」などと言った質問には即座に完璧に答えてくれます。便利ですねえ。
 では、特許業界のアシスタントとして使えるでしょうか?
「特許権の存続期間を教えて」、「特許権の無効理由を教えて」などいろいろ質問してみましたが、認識した文書をgoogle検索した結果が返ってきただけでした。さすがに無効理由から条文を教えてくれるとか、条文に規定された無効理由を教えてくれるなんてことはありませんでした。こんなことができる時代は来るのでしょうか。

 いろいろ試していくうちに、興味深いことも分かってきました。google アシスタントが私のこと(私のスマートフォンのデータ)を知りすぎているため、音声認識や提示内容に無用なバイアスがかかってしまうことがあるようです。
 例えば、私の名前を音声認識させようとしたのですが、何度やっても失敗しました。認識結果が妻の名前になってしまうのです。音は全く違うのですが。。。私のスマートフォンに私の名前よりも妻の名前の方が多く保存されていたからなのでしょうか?例えば、メールの宛先など。理由は定かではありませんが、この例のように、いつまでも期待した認識結果にたどり着かないことがありました。
 さらに、自分の知識外のことを知るためにgoogle アシスタントに聞いているのに、自分が知っていて当然の情報を返してくることがありました。例えば、「AIで有名な人を教えて」という質問にジェフリーヒントンさんのことを書いたウェブサイトを返してきたので、続けて「ジェフリーヒントンさんの特許出願を教えて」と入力してみました。できればgoogle patentsの検索結果を出力してほしかったのですが、Wikipedia の次に私たちのウェブサイトのブログのページを提案してきました。私たちはスマートフォンでの表示が適正であるのか否かを定期的にチェックしますので、おそらくchromeに履歴が残っていたのでしょう。しかし、それらは私たちが熟知していることなので、むしろ提案不要なのです。自分の知識外のことを知るためにgoogle アシスタントに聞いているのですから。

 google アシスタントは多くの場面で有用であり、試していてとても楽しかったですし、その多才ぶりに驚きました。今後も使いたいと思いますが、上述のように、一部においては改善が期待されるようです。google関連のサービスはものすごい速さで進歩しますので、いつの間にか改善してしまうかもしれません。定期的にウォッチしていこうと思います。

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米国ITC(国際貿易委員会)における侵害事件について

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 ここのところ、有名日本企業が米国ITCにて特許侵害の原告や被告になっているニュースを立て続けに見ました。ニコンが被告となったニュースやソニーが被告となったニュースもありましたし、ソニーが原告で富士フイルムが被告という有名日本企業同士が対決しているというニュースもありました。

 なんだかすごそうだということで、ITCについて簡単に調べてみました。

 ITCは、米国の国内産業の保護を使命とする機関であり、知的財産に関する問題に限らず、貿易に関する問題について調査責任を持つ準司法的な政府機関です。ITCは、関税法337条(https://www.usitc.gov/intellectual_property/about_section_337.htm)に基づいて、侵害輸入品が米国に輸入されることを税関に停止させるための排除命令を出すための調査(準司法的な手続)を行います。この調査は、大統領が任命した6名の委員による委員会と、行政裁判官(AIJ)によって行われます。行政裁判官が審理した内容の可否を、最終的に委員会が判断する審理構造となっています。

 ITCは、米国の国内産業の保護を使命としていますので、排除命令を受けるためには原告が対象特許等に関連する米国国内産業を有しているかその準備中であることが必要になります。そのため、いわゆるパテントトロールを含むNPE(Non-Practicing Entity)は排除命令を受けることが困難なようです。従って、NPEによるITCへの提訴の割合は、地裁における侵害訴訟よりも遙かに少ないようです(https://www.usitc.gov/intellectual_property/337_statistics_number_...)。ただし、上記URLの統計のようにNPEによるITCへの提訴は0ではなく、以下の事件のように複数の日本有名企業がNPEによって提訴されてしまっているケースもあります(https://pubapps2.usitc.gov/337external/3727)。

 陪審員制ではなく、知的財産の専門家による調査によって16ヶ月程度(https://www.usitc.gov/intellectual_property/337_statistics_...)の短期間で決定がなされる点等において、ITCは米国の地裁に侵害訴訟を提訴するよりも優位なようです。もちろん、ITCでは輸入の排除命令による救済が受けられるに留まりますので、損害賠償や輸入以外の実施行為の差止を希望する場合には、地裁に侵害訴訟を提起するしかありません。2016年においては、地裁が約4500件に対し、ITCが54件に過ぎません。それでもITCの被告となる日本企業は米国に輸出を行うような企業に限られますし、原告となる日本企業は米国に製造拠点等を有する企業に限られますので、ニュースに出た場合のインパクトは大きくなりますね。

 次に、これまでITCに日本企業がどれぐらい関わってきたかについて調べてみました。ITCのホームページ(https://pubapps2.usitc.gov/337external/)には2008年10月以降の事件のオンラインデータベースが公開されており、簡単に検索をすることができるようになっています。2008年10月よりも前の事件についてもリストをダウンロードできるようになっています。

 下のグラフは、原告と被告が日本企業となっている事件の数の推移を示しています。

 比較のために日本(JP)だけでなく、中国(CH)とドイツ(DE)のデータも載せています。これは当然のことですが、米国の国内産業を保護する日本と中国とドイツのいずれの企業も原告よりも被告になる事件の数が多くなっています。日本と中国の企業が被告になった事件の数がドイツの企業よりも多く、日本の企業は中国の企業と同様に標的にされている印象を受けます。一方で、日本は、中国やドイツよりも原告となった事件の数が多いことが分かりました。国内での侵害訴訟件数が他の国と比較して少なく、日本企業はおとなしい印象がありましたが、踏ん張りどころ(米国市場)では踏ん張っているのだなあと実感しました。

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未来を感じる特許

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 企業の未来を創る。
 特許出願をする企業の目的の一つには、当然、こういう類いの目的があると思います。特許明細書には、基本的に現在より後の未来に利用される可能性のある技術が書かれていますが、その中には、ごくまれに相当に先を行っている技術があります。特許関連ニュースをウォッチしていると、ときおりこのような出願が話題になります。この米国明細書(14/975618)も一部で話題になっているようで、私も読んでみました。
 明細書には、外郭の壁面にドローンが発着するプラットフォームおよび開口部が形成された高層ビルのような配送センターが書かれています。外郭の内部では人やロボットが作業するようです。実施形態には、ビルの形状やプラットフォームのバリエーションが多数開示されています。
 なんというかすごく未来を感じます。私は直感的に手塚治虫氏のマンガを思い出しました。氏のマンガに出てきそうなフォルム、アイディアだからでしょうか。
 amazonがドローンを使った配送の実験をしているということについては数年前から話題にはなっていましたが、配送センターの構造について独占排他権の獲得を目指し、出願に投資するのですから、おそらく実験しているだけというレベルを超えているのですね。ドローンでの配送なんて聞くと、私は、安全性の確保、法規制など、実現のために越えなくてはならない障害ばかりが思い浮かんでしまいますが、障害を考えるよりも先に実践してしまうamazonの行動力に頭が下がります。実現したら物流の世界が激変すると思うのですが、どうなりますかね。私が生きているうちにこの未来を覗いてみたいです。
 特許出願において突き抜けた未来を提示する必要はないですし、むしろ、特許出願はそういうものではなく、直近5年~10年ぐらいの技術に独占排他権を得るためのものであると、私は思っています。しかし一方で、未来を見据えて実際に行動し、実績を積み重ね、特許も確保する企業に勝つのは難しいとも感じます。

 先日、「IOT関連事業の知財による保護の現状と将来動向」というテーマの研修に参加してきました。IOT関連事業ではデータの利活用が重要になるが、現状ではITの超巨大企業がデータを握っており、独占による弊害が生じることを防ぐために産業構造審議会で法整備等の提案を行っていくなどといった話を聞くことができました。研修聴講中は、日本でも危機感をもって動こうとしている方々がいるのだなと感心していたのですが、帰宅後、紹介されていた報告書を見ていると、法整備等で独占を抑制することに期待するのは建設的ではないなと感じました。報告書には現状分析と今後の課題が書かれているのですが、多くの議題で「引き続き検討」という結論になっています。初読では少し期待外れだったのですが、法整備等は、現状分析、公平の観点での検討など、当然に時間がかかりますし、世界の変化に後追いで対処していくものであって、予見される変化に先んじるものではないですから、この類いの結論になるのはある意味当然でしょうか。
 報告書を読み、思索する中で気づいたのですが、私は無意識のうちに強者に対する法規制を期待していたようです。しかしこれは、特許業界人としてよろしくないな、と考えるに至りました。
先んじて行動し、実践し、投資した企業がビジネスで成功を収めた後に規制が過度に強化されるとイノベーションが促進されなくなってしまいます。規制強化を期待するのではなく、先手を打つことで競争優位性を確保する方がよほど建設的ですよね。特許業界人としては先手を打つことを狙っていく、常にそういうマインドであるべきでした。そういえば、研修会ではセンサー関係の技術で日本企業には優位性があるという話がありましたし、工場でのセンシングデータを利活用したスマートな物作りなどで日本企業が大量のデータを蓄え得る領域はまだあるという話も聞きます。まだまだ、データの収集で日本企業がイニシアティブを握れる余地はあると言うことでしょうか。私たちがまだ知らない未来を見せてくれる日本企業がどんどん現れることを期待したいですし、そういう企業のお手伝いをしていきたいと思います。

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特許審査部が特許庁になかった件

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特許庁?に審査面接に行って参りました。

面接日時の設定をし、審査官に意見書・補正書案を送り、あとは当日特許庁に行くだけだと思っていたところ、審査官から電話がありました。電話の内容は、六本木一丁目の仮庁舎に来てくださいとのことで、仮庁舎の入館に必要な認証用のバーコードをメールで送付するとのことでした。六本木一丁目の仮庁舎というのは、民間の六本木グランドタワー(http://izumigarden.jp/)という建物でして、テレビ東京も入っている今風の建物でした。

 あとは当日六本木一丁目の仮庁舎に行くだけだと思っていたところ、再度、審査官から電話がありました。その電話の内容は、入館方法がわかりにくいので説明をしておきますとのことでした。丁寧にこの説明をしてくれた審査官さんに感謝です。実際に行ってみたら、確かに分かりにくかったです。

 今後面接に行かれる弁理士さん等のためにその説明を以下に記載します。

1.事前にメールしてもらった認証用の一次元バーコーを印刷し、出発。
2.東京メトロの南北線の六本木一丁目駅の西改札口からグランドタワーのロビーに入る。
2.ロビーのチェックイン機に認証用のバーコードをかざして二次元バーコード付きの入館証を受け取る。
3.受け取った入館証をかざして右手側の特許庁ゲートを通過する。
4.一番右手奥のエレベーターホール前のゲートに入館証をかざし、エレベーターホールに入る。
5.4基あるエレベータのどれかで面接室がある18階に行く。
6.18階の内線電話で到着した旨を審査官に伝える。

 前日にお話しした弁理士さんの話では、1.の西改札口が開通するまではかなりの遠回りをする必要があったそうで、開通日(6月4日)のわずか3日後に行くことができて幸運でした。4.エレベーターホールは登庁時刻付近では行列ができますので、注意が必要です。

  4.のエレベーターホールかエレベータ内にあった行先案内板を見て驚きました。なぜかというと特許審査部がずらっと(たぶん全部)並んで記載されていたからです。つまり、特許審査部が特許庁になかったんです。これまで手続をしていた相手が、思っていた所(特許庁)と全然違う場所にあったということに軽いショックを受けました。あとで調べたら意匠の審査部も六本木のようです。

 送信先を認識しなくても手続ができる電子出願ソフトに慣れきってしまうのは、ある意味、恐いことなのだと思いました。電子出願ソフトで特許庁に送信された出願データを六本木で見ることが可能になっているのでしょうか。データの流れ、データの所在も気になります。今の時代、技術的には出願データがどこに送られてても何の問題もないでしょうが、セキュリティには万全を尽くしていただきたいです。いろいろ想像しながら帰路につきました。

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特許実務と機械翻訳

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 特許業界の皆さん、機械翻訳を使われたことはあるでしょうか?
 私自身は、少しずつ利用するケースが増えてきました。外国のクライアントへのメールを英語で書くときに、英語の文書がすぐに浮かばなければ、日本語で文を作成し、google 翻訳やBing 翻訳で翻訳します。このようなスタイルで機械翻訳を利用しているとその精度に驚かされます。ほぼ完璧、と感じます。google 翻訳では表示された文書の単語をダブルクリックすると単語の意味や例文が出てきて辞書的にも使えるため、徐々に手放せないサービスになりつつあります。

 特許業界に身を置いていると、やはり、機械翻訳が実務に利用できるのか気になります。そこで、機械翻訳を利用して、いくつか試してみました。この結果、
 自分の英語能力では、
 英語→日本語の翻訳については、自分で翻訳した方が速い。
 日本語→英語の翻訳については、機械翻訳を援用した方が速い。
となりました。

 英語→日本語については、以前から読もうと思っていた公報を利用して機械翻訳の質をみてみました。公報はUS 20170095925 A1です。これは、ディズニーによるベイマックス風のロボットの出願として一部で話題になっていた公報です。
 翻訳のスピードは極めて速く、大半(90%以上)は文章の大意を把握できるクオリティで翻訳できているので、機械学習導入以前の翻訳ソフトウェアに比べると、非常に高性能になったように思えます。特に、google 翻訳はどんどん意訳するようで、そのスキルには驚かされます。
 例えば、DETAILED DESCRIPTION OF THE PREFERRED EMBODIMENTS を【発明を実施するための最良の形態】と訳します。大量の学習データに基づいて機械学習しているとはいえ、この翻訳には驚きました。逐語訳の世界ではあり得ない翻訳です。米国明細書と日本明細書の対応関係を機械学習できていると言うことなのでしょうか?あるいは人手でチューニングするのでしょうか?
 また、google 翻訳では請求項に含まれるtheを逐一前記に読み替えており、明細書の実施形態等に含まれるtheは無視されています。なんでしょうかこの特許業界のローカルルールまで熟知したような訳出は。このような翻訳が機械翻訳で実現されている現状には正直驚きました。

 しかし、、、、残念ながら実務には利用しにくいと感じました。
 まず、明細書の内容把握をする上で、5%でも意味の通らない部分があると文章をすらすらと読むことができず、意味不明の部分がでてくるたびに原文を確認する作業が必要になってしまいます。このようなことをするぐらいなら自分で読んだ方が速いと感じました。
 さらに機械翻訳では、同一文書内の同一文字列を異なる言葉に訳すケースがあるようです。これは長文読解の際に致命的なように思えます。同じ意味の概念を異なる言葉で表現するというのは、特許明細書では最も避けるべき初歩的なミスですし、特許業界以外でも訳文内の異なる単語は異なる意味と解釈されるのが普通のように思えます。このような訳はgoogle 翻訳とBing 翻訳の双方で散見されます(例えば、US 20170095925 A1の0011内のrigid support element)。機械翻訳では同一単語を同一訳として出力する制約を設けるのが難しいとか、特殊な事情があるのでしょうか。

 日本語→英語の訳は日常的に利用してまして、とても有用と感じます。主に、海外のクライアントへのメール(日本の特許制度や事務所料金等の問合せに対する返信等)を作成する際に利用します。これらの文書はそれほど長文ではないのですが、私の英語能力では、自分で一から英文を書くより、機械翻訳を使った方が何倍も速く文章を書き上げることができます。このような使い方において、機械翻訳はほとんどそのまま利用可能なクオリティと感じます。機械翻訳は、特許文書よりも日常会話的な文書の方が得意なのでしょうか。また、仮に修正が必要になったとしても修正作業は苦になりません。そもそも、日本語で文章を作成したとしても校正はしますので、このケースで英文に誤訳が5%程度含まれていたとしてもさほど作業量は増えません。

 いずれにしても、この分野の技術革新のスピードは極めて速く、上述のようなローカルルールへの対応も実現できているため、英語→日本語の翻訳において私が感じている問題は近々解消するかもしれません。機械翻訳のレベルがもう一段上がったら、特許事務所内のクローズド環境で明細書を機械翻訳をすることで翻訳支援をする実務も可能になるかもしれませんので、定期的にチェックしていこうと思います。

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プログラム著作物の争点(その5:最終回)

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前回から間があいてしまいましたが、プログラム著作物の争点の最終回(その5)を書きます。
これまでの話(その1~4)の概要は以下のとおり。

  • (その1)プログラム著作物の侵害訴訟において『創作性』と『類似』がセットで揉めやすい。
  • (その2)『創作性』がある部分が『類似』しているか否かで侵害の成否が決まるため、『創作性』と『類似』がセットで揉めやすい。
  • (その3)『ソースコード』に『創作性』がある場合にプログラム著作物として著作物性があり、それが『類似』している場合に、プログラム著作物の侵害となり得る。
  • その4)(その3)の判断基準を画定してきたいくつかの判例の紹介と、特許の保護対象との比較。

 今回(その5)は、以上のお話のおさらいとして、「混銑車自動停留ブレーキ及び連結解放装置プログラム事件」(知財高裁 平成21(ネ)10024号)を紹介させてもらいます。この事件は、一審でプログラム著作物としての著作物性が認められ、控訴審でそれが覆されたという事件です。また、特許との関係について判断されています。

 プログラム著作物として著作物性があるか否かは、『プログラムに著作物性があるといえるためには,指令の表現自体,その指令の表現の組合せ,その表現順序からなるプログラムの全体に選択の幅が十分にあり,かつ,それがありふれた表現ではなく,作成者の個性が表れているものであることを要するものであって,プログラムの表現に選択の余地がないか,あるいは,選択の幅が著しく狭い場合には,作成者の個性の表れる余地もなくなり,著作物性を有しないことになる。』という考え方で判断されているのが最近の傾向です〔例えば(その4)で紹介した「宇宙開発事業団事件」(知財高裁 平成18(ネ)10003号)〕。

 今回の「混銑車自動停留ブレーキ及び連結解放装置プログラム事件」の一審・控訴審もこの考え方に沿って判断がされていますが、より突っ込んだところで判断が分かれました。
 一審では『・・このような車両の連結・解放・ブレーキ操作の方法・装置は,特許を取得する程度に新規なものであったことから,これに対応するプログラムも,当時およそ世の中に存在しなかった新規な内容のものであるということができる。したがって,本件プログラムは,DHL車の部分及びTC車の部分を併せた全体として新規な表現であり,しかも,その分量(ソースリストでみると,DHL車の部分は1300行以上,TC車の部分は約1000行)も多く,選択配列の幅が十分にある中から選択配列されたものということができるから,その表現には全体として作成者の個性が表れているものと推認することができる。』と判断されました。ソースコードによって実現される機能が特許的に新規であり、そのソースコードの量も膨大だから、プログラム著作物としての著作物性が認められるというのが一審の判断です。

 これに対して控訴審では、『もっとも,1審原告は,本来,ソースコードの詳細な検討を行うまでもなく,本件プログラムは著作物性を有するなどと主張して・・・本件プログラムのいかなる箇所にプログラム制作者の個性が発揮されているのかについて具体的に主張立証しない。したがって,DHL車側プログラムに挿入された上記命令がどのような機能を有するものか,他に選択可能な挿入箇所や他に選択可能な命令が存在したか否かについてすら,不明であるというほかなく,当該命令部分の存在が,選択の幅がある中から,プログラム制作者が選択したものであり,かつ,それがありふれた表現ではなく,プログラム制作者の個性,すなわち表現上の創作性が発揮されているものであることについて,これを認めるに足りる証拠はないというほかない。以上からすると,DHL車側のプログラムには,表現上の創作性を認めることはできない。』と判断されました。ソースコードのどこに選択の幅があって、その選択に創作者の個性が表れていることを具体的に立証していないから、いくら特許として新規性があってもプログラム著作物としての著作物性が認められないというのが控訴審の判断です。
 この事件において、プログラムが新規な機能を有することは、プログラム著作物としての著作物性を推認する根拠にすらならないと判断されたことになります。プログラムが特許となる程度に新規であることと、プログラム著作物としての著作物性があることとは、無関係であるということが念押しされた判決であると言えます。プログラムの保護に対する著作権法と特許法の考え方の相違が顕著に表れた判例だと言えます。
 プログラムは特許法だけでなく著作権法でも保護されるという印象があり、それ自体は間違いではないのですが、需要者が求めるようなプログラムの新規な機能については特許法でのみ保護されることに留意すべきです。5回にわたってこのテーマを書きましたが、プログラム発明について特許出願をする必要性を改めて認識させられた考察となりました。

 一旦、このテーマは終わりますが、コードに選択の幅があるなかで、どのようなコードを選択した場合に創作性が認められるかについて、引き続き調べてみようと思います。

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展示会を見てきました

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 先日、日経BP社主催の展示会を見てきました。
 クラウド、セキュリティ、IOT、工場、VR等に関するセミナーや展示が行われていました。私は、クラウド、セキュリティ、IOT、工場に関心があり、それぞれのセミナーに参加しつつ展示をまわったのですが、弁理士から見ても非常に興味深いと思える話をたくさん聞くことができました。
 IOT、工場関連では、やはりスマートファクトリー、ロボットへの人工知能の適用が話題になっていました。スマートファクトリーの実現には各社が取り組んでいるようで、実現の過程で重視すべきことなどが紹介されていました。例えば、スマートファクトリーはITとOT(Operational Technology)との融合によって実現されますが、一般的にはITの技術者とOTの技術者とでスキルセット、マインドセットが違うため、各部門の人材が協働し、うまく成果を出すための仕組み作りが重要なのだとか。
 他にも、スマートファクトリーで気をつけるべきサイバーセキュリティの講演などがありました。先行者の経験を他者に伝達することで、産業、市場を立ち上げようとする試みが行われていたように思われました。スマートファクトリーについてはまだまだ成長初期なのでしょうか。成長初期であることや異なる分野の技術者の知見を融合することを考えると、スマートファクトリーの開発に際しては発明がたくさん生まれそうですね(この場合、出願すべきでない発明も多いように思われますが)。

 ロボットへの人工知能の適用に関連した話題では、シンプルな機械学習をすることがトレンドになっているという話が興味深かったです。ロボットの稼働中にセンシングした情報で機械学習をする際、例えば、画像情報をエッジ側(ロボット側)で処理してしまい、最小限の画像情報だけをクラウドにアップロードして機械学習するとか、汎用的な作業に対応した機械学習をするよりもロボットの特定の作業に特化した機械学習をするとか、そういうシンプル化がトレンドだとおっしゃっている講演がありました。機械学習では大量のデータを集めて解析を行うことで人間に分からない推論を実施するという要望もあるように思えるのですが、この場合、リッチな情報を扱うことに利点があり、シンプル化の方向性ではありません。当然、いろいろな方向性はあるのでしょうが、今後、大きなトレンドが生まれることはあるのでしょうか。個人的にはシンプル化の方が面白いと思いました。シンプル化の際にどの情報を削り、どの情報を使うのか人為的に試行錯誤することもあるでしょうし、この段階で発明の余地があるように思えますので。

 クラウドに関しては、あまり詳しくなかったこともあり、あるサービスのクオリティに驚きました。Google社が提供しているG Suiteというサービスには機械学習によるレコメンドが多用されており、例えば、プレゼン資料作成のアプリでは、テキストや写真を選択し、実行ボタンを押すと機械学習に基づいてクールなデザインをいくつもレコメンドしてくれるそうです。スプレッドシートのアプリでは、数百のデータについて「最も売上数の多い商品は?」などと自然言語で質問を入力すると、こういうグラフはどうですか?などと結果を返してくれ、そのグラフや統計に利用した式も提示してくれるそうです。このアプリでは、自然言語の解釈とグラフのレコメンドに機械学習が利用されているようです。プレゼン資料のデザインやスプレッドシートでの体裁決定などは業務本来の目的ではないため、これらを支援することで業務上発生する無駄を削減できるという講演でした。さすがですねえ。こんなことができれば業務上の生産性が向上するでしょうね。他のクラウドサービスでも似たようなことはできるのでしょうか?
 機械学習で効率化できる作業は我々弁理士の日常業務の中にもたくさんありそうです。我々は大量の文書を扱いますので、機械学習を導入すれば検索業務はものすごく効率化できそうです。

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