前回までの記事
プログラム著作物の争点(その1)
プログラム著作物の争点(その2)
プログラム著作物の争点(その3)
前回(その3)では、プログラムのソースコードが、原告プログラムと被告プログラムとの間で類似し、かつ、創作性がある部分となっていないとプログラム著作物の著作権侵害にはならないということをお話ししました。このことが判示されている典型的な2個の判決文(一部)を紹介します。
プログラムを作成者は、機能を実現できるソースコードの選択肢のなかから実際に記述するものを選択していくことになります。この選択肢のなかからどれを選んだかというところに、プログラム作成者の個性が発揮され、そこにプログラム著作物の創作性が認められると、上記の判例は言っています。ソースコードの選択肢が多い機能を実現するプログラムほど、創作性が認められやすいということになります。あくまでも、ソースコードの選択肢が多い機能であることが重要であって、機能そのものの新しさや突飛さは重要な意味をなさないということになります。なお、宇宙開発事業団事件の判決文はその後の判決で多く引用されており、現状の判断基準になっていると考えてよいでしょう。
このように、プログラムが実現する機能の新しさや突飛さはプログラム著作物として保護されるか否かの判断において重要な意味をなさない一方で、プログラム特許においては、機能の新しさ(新規性)や突飛さ(進歩性)によって特許性(創作性)の有無が決定づけられます。逆に、プログラム著作物において創作性が認められるようなソースコードをクレームに書いても、そもそも発明であることが否定されて特許にはなりません(コンピュータ・ソフトウエア関連発明の特許審査基準の2.2.3)。
図4のように、著作権法と特許法とでは双方とも権利客体としてプログラムが規定されているものの、プログラムのうち保護される部分がまったく異なっていることをお分かり頂けたかと思います。
このような結論を、さも簡単に述べることができるのも、(その1)で述べたように、多くの判例で散々揉めてきた歴史の賜であると言えます。
今回はこのぐらいにしておいて、次回、最終回は、「混銑車自動停留ブレーキ及び連結解放装置プログラム事件」(知財高裁 平成21(ネ)10024号)を紹介します。この判例では、上述した判断基準を前提として特許の新規性とプログラム著作物の創作性との関係が議論されています。