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未来を感じる特許

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 企業の未来を創る。
 特許出願をする企業の目的の一つには、当然、こういう類いの目的があると思います。特許明細書には、基本的に現在より後の未来に利用される可能性のある技術が書かれていますが、その中には、ごくまれに相当に先を行っている技術があります。特許関連ニュースをウォッチしていると、ときおりこのような出願が話題になります。この米国明細書(14/975618)も一部で話題になっているようで、私も読んでみました。
 明細書には、外郭の壁面にドローンが発着するプラットフォームおよび開口部が形成された高層ビルのような配送センターが書かれています。外郭の内部では人やロボットが作業するようです。実施形態には、ビルの形状やプラットフォームのバリエーションが多数開示されています。
 なんというかすごく未来を感じます。私は直感的に手塚治虫氏のマンガを思い出しました。氏のマンガに出てきそうなフォルム、アイディアだからでしょうか。
 amazonがドローンを使った配送の実験をしているということについては数年前から話題にはなっていましたが、配送センターの構造について独占排他権の獲得を目指し、出願に投資するのですから、おそらく実験しているだけというレベルを超えているのですね。ドローンでの配送なんて聞くと、私は、安全性の確保、法規制など、実現のために越えなくてはならない障害ばかりが思い浮かんでしまいますが、障害を考えるよりも先に実践してしまうamazonの行動力に頭が下がります。実現したら物流の世界が激変すると思うのですが、どうなりますかね。私が生きているうちにこの未来を覗いてみたいです。
 特許出願において突き抜けた未来を提示する必要はないですし、むしろ、特許出願はそういうものではなく、直近5年~10年ぐらいの技術に独占排他権を得るためのものであると、私は思っています。しかし一方で、未来を見据えて実際に行動し、実績を積み重ね、特許も確保する企業に勝つのは難しいとも感じます。

 先日、「IOT関連事業の知財による保護の現状と将来動向」というテーマの研修に参加してきました。IOT関連事業ではデータの利活用が重要になるが、現状ではITの超巨大企業がデータを握っており、独占による弊害が生じることを防ぐために産業構造審議会で法整備等の提案を行っていくなどといった話を聞くことができました。研修聴講中は、日本でも危機感をもって動こうとしている方々がいるのだなと感心していたのですが、帰宅後、紹介されていた報告書を見ていると、法整備等で独占を抑制することに期待するのは建設的ではないなと感じました。報告書には現状分析と今後の課題が書かれているのですが、多くの議題で「引き続き検討」という結論になっています。初読では少し期待外れだったのですが、法整備等は、現状分析、公平の観点での検討など、当然に時間がかかりますし、世界の変化に後追いで対処していくものであって、予見される変化に先んじるものではないですから、この類いの結論になるのはある意味当然でしょうか。
 報告書を読み、思索する中で気づいたのですが、私は無意識のうちに強者に対する法規制を期待していたようです。しかしこれは、特許業界人としてよろしくないな、と考えるに至りました。
先んじて行動し、実践し、投資した企業がビジネスで成功を収めた後に規制が過度に強化されるとイノベーションが促進されなくなってしまいます。規制強化を期待するのではなく、先手を打つことで競争優位性を確保する方がよほど建設的ですよね。特許業界人としては先手を打つことを狙っていく、常にそういうマインドであるべきでした。そういえば、研修会ではセンサー関係の技術で日本企業には優位性があるという話がありましたし、工場でのセンシングデータを利活用したスマートな物作りなどで日本企業が大量のデータを蓄え得る領域はまだあるという話も聞きます。まだまだ、データの収集で日本企業がイニシアティブを握れる余地はあると言うことでしょうか。私たちがまだ知らない未来を見せてくれる日本企業がどんどん現れることを期待したいですし、そういう企業のお手伝いをしていきたいと思います。


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