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プログラム著作物の争点(その2)

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明けましておめでとうございます。

昨年に引き続きプログラム著作物の争点について書かせてもらいます。

 

前回(その1)では、プログラム著作物の判決文のキーワードの解析結果から、

・プログラム著作物の侵害訴訟では『創作性』と『類似』が揉めやすい。

・プログラム著作物の侵害訴訟では『創作性』と『類似』とがセットで揉めやすい。

と言える、というところまでお話ししました。

 

なぜでしょう?

プログラム著作物の著作権侵害が成立するためには、原告プログラムと被告プログラムとを比較したときに、これらの間で『類似している部分』が、原告プログラムのうち『創作性がある部分』であることが必要だからです。著作権法では、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(2条1項1号)が保護されるのであり、プログラムのうち創作性がない部分はいくらマネをしても侵害にはなりません。

下の図1では、『類似している部分』が大きいですが『創作性がある部分』を捉えていないので著作権侵害が成立しないことになります。一方、図2では、図1ほど『類似している部分』が大きくないですが『創作性がある部分』を捉えており、著作権侵害が成立し得ることになります。なお、原告・被告は一審が基準です。

 

また、図1,図2では、プログラムが加工するデータの加工度に注目した横軸(入力→出力)と、プログラムの具体性に注目した縦軸(機能→ソースコード)で、プログラムの部分を把握しようとしています。今回はこうしましたが、他にもプログラムの部分を把握するのに適切な座標軸は考えられると思います。

ちなみに、海賊版プログラムは、全体が『類似している部分(しかも同一)』となるため、原告プログラムのどこかに『創作性がある部分』が存在すれば侵害が成立します。多くの場合、海賊版プログラムのように単純ではなく、部分的に類似するという状況となるため、『創作性』と『類似』とがセットで揉めることとなります。

 

図2のように、『類似し、かつ、創作性がある部分』が存在すれば、必ずプログラムの著作権侵害が成立するのでしょうか?

その答えは、図2において“『類似し、かつ、創作性がある部分』がどこであるかに依存する”ということになります。このことは、『創作性』と『類似』とがセットで揉めた判例の積み重ねによって定まってきています。

今回はこれぐらいにしておいて、次回は『類似している部分』がどこにあればプログラムの著作権侵害が成立するのかについて具体的な判例を挙げて話をしたいと思います。


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