Tensor Flowのロゴ(例えばこのリンク)を見るといつも弁理士の役目を思い出します。このロゴはある方向から見るとT、別の方向から見るとFに見えるのですが、私は弁理士としていつもこういうスタンスで打ち合わせに臨まなきゃいかんと思っています。発明は見方を変えると全く違う姿になるぞと。。。
さて、日本の特許業界は繁忙期なので今回は小ネタです。
Tensor Flow。人工知能に興味のある方なら一度は耳にしたことがあると思います。実際に触ったことがある方も多いかもしれません。オープンソース化から1年ちょっと経過したようです。Tensor Flowに限らず、人工知能開発のための各種のライブラリが無料で公開されています。私は、Tensor Flow公開のニュースを聞くまで、このようなライブラリの無料公開が行われていることを知りませんでしたので、ニュースを聞いてちょっとした衝撃を受けました。Tensor Flowを使えば、素人(例えば私)でもアイディアと少しのプログラミング知識だけで、身近な問題を解決する技術を開発することができるのではないか?
ちょっと前まで、技術開発は専門知識を身につけた人材が開発環境の整った開発部に属することで初めて実現される、ある種の特権のようなものであったと思うのです。ですが、誰でも無料でライブラリを使えるならば、人工知能開発の少なくとも一部についての障壁は存在せず、誰でも開発者になれるように思えます。ソースデータをネットで収集し、Tensor Flowを使って機械学習を行えば、結構いろいろできるように思います。
実際、ネット上には「Tensor Flowで○○をやってみた。」といった内容の記事がたくさんアップされています。開発の障壁が下がった世界。一般人としてはとても良い世界のように思えます。ちょっとしたアイディアから意味のあるものをつくり出すことができる可能性があるわけですから。
一方、特許業界人としてその世界を見ると、かなり大変な状況なのではないかと思います。人工知能関連技術は他の技術と比較して、進歩性ありとされる技術のレベルが極めて速い速度で上がっていくように思えるからです。専門的な知識を持った開発者が自社の設備を使って開発を進める一方、専門的な知識を持っていない人でも自分のアイディアをちょっと試してみることができる。そして、ある程度の成果が得られた場合に、それをネットで公開する人も多い。それって進歩性判定の基礎となる公知文献が、極めて速い速度で増えていくことになるのでは?少なくとも、自動車のエンジン開発等、特殊な環境が必須になる一般の分野と比較して遥かに進歩性のレベルが上昇しやすいように思えます。大変な時代になってしまったと思います。特許業界人としては。人工知能関連技術を開発し、特許化する意志のある企業はものすごい速さで出願していく必要があるように思えます。
先日、海外企業(特に米国企業、中国企業)に比べて日本企業による人工知能関連の出願が遅れているというニュースが報じられていました。日本企業もがんばってほしいなあ~。