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人工知能関連技術の特許出願統計

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 人工知能関連技術について出願動向を調べました。一部をメモしておきたいと思います。
 以下の棒グラフは(公開年ANDキーワード)で得られたデータの統計です。検索にはJ-PlatPatを使用しました。例えば、公報全文に自己符号化器が含まれる2001年公開の出願は、(公開日:2001年1月1日~12月31日)AND(公報全文に含まれるキーワード:自己符号化器ORオートエンコーダー)として集計しました。2017年は4月17日までのデータになります。特定のキーワードを含む明細書の年毎の公開件数(左縦軸)が棒グラフで示されています。また、日本特許庁全体での年毎の公開件数(右縦軸)が折れ線グラフで示されています。

【図1】

 図1は、人工知能というキーワードが含まれる公報を公開年で集計した結果です。人工知能というキーワードを含む出願は2002年頃から増え始めて年200件に達した後、2007年頃に減少に転じ、2011年頃に再び増加して近年は年200件レベルで推移しています。2016年は少し減っていますが2017年は4月の段階で100件を超えていますから直近では増加傾向であるように思えます。2003年以降の底は2009年ですから、サブプライム問題に起因する不況の影響を受けて減ったと推定されます。
 しかし、いずれにしても公開件数が多くて200件規模というのは、ブームと言われている状況からして少なすぎるように思えます。多くの企業がしのぎを削っている昨今の状況を全く反映していないように思えます。

 そこで、キーワードを変えて再検索してみました。
 図2は、機械学習というキーワードが含まれる公報を公開年で集計した結果です。

【図2】

 ご覧の通り、きれいに「ブーム」といえるデータになりました。国内公開件数の減少に全く影響されずに機械学習というキーワードが含まれる公報の公開数が増加しているように見えます。
 「人工知能」という漠然とした記述よりも、「機械学習」というより具体的な技術が明細書で述べられ、その件数が急激に増加しているという事実は、技術の解説書であるべき特許明細書の特性を反映しているのかもしれません。ニュース等では「機械学習」より「人工知能」の方がよく使われるのと好対照ですね(グーグル検索でも「人工知能」でのヒットの方が「機械学習」でのヒットより圧倒的に多いです)。むろん、ブームに乗じて「機械学習で行ってもよい」という程度の記述が含めてある明細書も存在するでしょうが、そうであっても図2に示す激増は、近年のようにブームと言われる状況が特許業界でも起こっていることを示しているように思えます。各社で熾烈な争いが行われていると推測されます。

 

 次に、個人的に興味がある機械学習関連の要素技術について調べてみました。図3は、word2vec、自己符号化器(オートエンコーダ)、強化学習というキーワードが含まれる公報を公開年で集計した結果です。

【図3】

  全ての要素技術において公開件数は少ないのですが、自己符号化器については、あまりの少なさにびっくりしました。明細書で公開するような内容ではないと言うことでしょうか?私が以前読んだ本では、自己符号化器が、現在の人工知能ブームの一要因としてあげられていたため、もっと出願されているだろうと推測していました。ちなみに米国ではautoencoderというキーワードを含む明細書で、比較にならないほど多くの出願がなされています。
 word2vecは最近(2014年頃?)提唱された技術なので、まだ出願は少ないと推測されます。
 強化学習は、少ないながらもある程度の数の出願で触れられているようです。こちらも、日本全体の公開件数の減少に反して件数が増加または維持していると言えるでしょうか。2017年は突出して多いため、今後延びていくかもしれません。
 私自身は機械学習関連の技術で強化学習に極めて大きい関心を持っています。強化学習は、教師なし学習で自動的に最適化してくれる技術であるため応用範囲が非常に広く、出遅れているといわれる日本企業や、規模の比較的小さな企業にもまだチャンスがあるのではないかと期待しています。
 機械学習を含む明細書を出願している出願人には、出願件数上位の常連ではない出願人が含まれていました。しかも、直近で非常に多くの出願をしており、直近のシェアが突出している出願人が存在します。この企業の製品を見ると出願数を激増させる戦略が極めて妥当のように思えます。むしろ、同業他社は何をしているのだろうと思うぐらいです。
 調べてみると他にも各種企業の様々な戦略が垣間見られて非常に興味深かったです。機会があれば、より深掘りしてみようと思います。


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