先週、欧州の代理人さんに事務所を訪問してもらいました。
4月に中国の上海で行われた知財カンファレンスでたまたま挨拶をしたのがきっかけで、弊所と取引が始まった欧州の代理人さんです。
ホテルに迎えに行き、一緒にランチをし、その後、事務所で挨拶をし、次の目的地に案内したという流れ。弊所のオフィスで簡単に事務所紹介をした後、依頼案件の手続方針と進捗状況の確認をしました。
うれしいことに、弊所のメール等のレスポンスが早くて仕事がやりやすいと言っていただけました。日本の大規模事務所のレスポンスが遅いとは一概には言えないとは思いますが、レスポンスの早さは弊所のような小規模事務所の強みなのだと改めて認識しました。時差などがあって難しいと感じることもありますが、個人的には、即日で返信をするように心がけています。
それ以外、ランチ中や移動中など、とにかく雑談しっぱなしでした。話したいことが次々に頭に浮かんでくる英会話のレベルにないため、正確には、一方的に雑談されっぱなしの状況であります。要改善です。
新たなクライアントに喜んでもらえることはとてもうれしいことです。世界中には、我々のサービスに満足してくれるクライアントがまだまだたくさんいるはずです。どのようにして世界中の潜在的なクライアントにKnowledgePartnersの存在を示すか、今後じっくりと作戦を練らねばならないといけないと感じました。
弊所はマドプロ(マドリッド協定議定書(標章の国際登録に関するマドリッド協定の1989年6月27日にマドリッドで採択された議定書))の外内案件も扱っています。マドプロの外内案件というのは、概ね、日本の特許庁が出した暫定的拒絶通報を撤回してもらうための中間処理のことを意味します。暫定的拒絶通報における拒絶理由の根拠は日本の商標法であり、反論する相手も日本の審査官であるため、われわれ日本の弁理士の出番ということになります。マドプロということで特別な感じもしますが、業務の内容は国内の拒絶理由対応と別段変わるものではありません。
ただ一点だけマドプロ特有だと思うことがあります。それは、マドプロの場合、自らの支配下にある先願先登録商標を引用して4条1項11号で拒絶されるケースが国内の案件よりも多いということです。つまり、先願先登録商標が自らの支配下にあるにも拘わらず、特許庁において他人の先願先登録商標であると判断された結果、4条1項11号で拒絶されるケースが多いように感じます。
その原因の一つに、先願先登録商標の移転登録や住所変更のやり忘れが挙げられます。権利の承継や住所変更があっても、外国の権利者がなかなか日本の商標権の登録情報までアップデートしきれていないというのが実情なのでしょう。特に一般承継において海外の知財権の処理まで気が回らないというのは仕方がないようにも思います。
そんなことで、暫定的拒絶通報を受けてから慌てて権利を同一人に帰属させるための移転登録手続をしないかん、ということになるわけです。マドプロで暫定的拒絶通報を受けた出願人は先願先登録商標もマドプロを利用していた場合が多いため、多くの場合、先願先登録商標としての国際登録の名義人の変更手続をすることになります。その段階で、名義人の変更について規定しているマドリッド議定書9条を読むことになるのですが、不思議と条文の記憶が鮮明なのです。理由として思い当たるものは、だいぶん昔に受験した弁理士試験の短答式試験しかありません。
ということで、過去問を見てみました。その結果、マドプロの名義変更に関する問題は最近の9年間(H21~H29)のうちの6年で8枝も出題されていました。
・H28-問10枝4
・H26-問11枝ハ,ニ
・H24-問10枝3
・H23-問14枝4
・H22-問19枝1,4
・H21-問5枝イ
こんなにも出したら誰も間違えないでしょーという頻出度です。なぜ記憶が鮮明だったか納得がいきました。
と、同時に、意外(と言ったら失礼かも知れませんが)と実務のことを考えて作られてたんだなあと、弁理士試験のありがたみを感じました。
受験される皆様におかれましては、無駄な知識の詰め込みが多いように感じることもあることと思いますが、このように将来ふと役に立つこともあるので、マドプロは捨てた!などと言わずに取り組んで頂ければと思います。
先週の記事に便乗します。KickStarterにこんなもの(リンク)がありました。上海のUnihertzという企業が提案している小さいスマホです。ディスプレイはわずか2.45インチだそうです。現在主流のスマホのデグレードモデルであると思います。技術革新が盛りだくさんという類の商品ではありません。
このようなコンセプトの商品を見ると、クレイトン・クリステンセン著の『イノベーションのジレンマ』を思い出さずにはいられません。この著書では、先行企業(巨大企業)が後発企業(新興企業)に逆転されてきた過去の実例を挙げ、その際に起きていた現象やメカニズムが詳しく説明されています。一言で説明するのは難しいのですが、『先行企業が現状の利益を維持するべく従来製品の高機能化・高性能化に注力している間に、高機能化・高性能化とはコンセプトの異なる後発企業の代替製品が多くの需要者に受け入れられ、市場が席巻されてしまう』というような話です。今回のスマホの話に当てはめると、先行企業がスマホのカメラ等の機能の改良に注力している間に、機能をそぎ落とした小型スマホが多くの需要者に支持され、市場が席巻されてしまうというようなことが将来起こるかも知れないというようなことです。ただ、『イノベーションのジレンマ』は技術経営の分野で常識レベルのことですので、当然、スマホの先行企業は対策を打っていることと思いますが...
ここで、話をKickStarterに戻します。KickStarterのようなクラウドファウンディングの大きな特徴の一つとして、インターネット上に存在する多数の投資家が、ほぼ需要者と同じ目線を持っていることが挙げられると思います。需要者のニーズに適っている企業や商品に対して投資が集まりやすくなるので、全体的に見れば効率的な投資や技術開発が実現するのではないかと思います。また、クラウドファウンディングの投資状況を解析することにより、需要者のニーズの動向を掴むことができるようにも思います。例えば、需要者のニーズが従来製品の高機能化・高性能化に向かっているのか、それとは異なる方向に向かっているのかを先行企業が早期に察知できるのかも知れません。
十周年の記事(⇐ リンク)で宣言したとおり、仕事が少なそうな時期を見計らって海外出張をしてきました。今回は、ほぼ一週間にわたって中国を訪問してきました。そのなかでいくつか感じたことを、書こうと思います。帰りの飛行機のなかでこの記事を書いており、ビジネスマン気取りですが、もちろん席はエコノミーです。
ある企業で10名ぐらいの知財担当者の方たちと面談をしました。そのメンバーのすべてが2,30代であったように感じます。みなさん、ものすごく熱心かつ活発であり、日本からやって来た私に対して質問が絶えませんでした。中国の知財の将来は明るいように感じました。
また、知財部門のマネージャやディレクターにも年齢の若い方が見えたことに驚きました。大企業のマネージャやディレクターでも自分(40歳)とそれほど年齢が変わらないかもというような方も見えました。中国において知的財産業務はまだまだ日の浅い業務だからでしょうか。あと、日本よりも女性が多いように感じました。
特に、日本の知財制度の“ネガティブな側面”についてはよく知ってみえます。『質問が絶えませんでした』と先に書きましたが、具体的には日本の知財制度のネガティブな側面についての質問が絶えませんでした。
侵害訴訟のことをよく質問されました。侵害訴訟の数が少ないこと、原告の勝訴率が低いこと、無効の抗弁のこと、損害賠償額が低額であること、3倍賠償ルールがないことなど、あまり聞いて欲しくないことをよく聞かれました。聞かれた以上は、答えざるを得ませんでしたが...
挙げ句、シフト補正についても聞かれてしまい、これには苦笑せざるを得ませんでした。痛いところを突いてきます。それ、こっちだってJPOさんに文句言いたいよ。
あくまでも個人的な意見ですが、日本で侵害訴訟の数が少ないことは決して悪いことだとは思っていません。侵害訴訟の数が少ないからといって侵害が横行しているとも思いません。つまり、侵害訴訟によらなくても侵害が抑止できている日本独自の均衡感みたいなものがあるのだと思います。
日本の製品マーケットはUS,EUと比べると小規模なので、日本の知財は、投資する価値があるか否かの当落線上にあるのだろうなと感じました。とにかく、今回、外国からの目線で日本の知財制度を考えるよい機会になりました。
もっといろいろ書こうと思ったんですが、そろそろ着陸態勢に入るので、このあたりで止めます。やはり中国は近い。時差も少なく気軽に行くことができる国ですね。
住宅ローンの相談に何回か行ったのですが、そこで『すいません、私、勉強不足なもので、特許事務所の業務内容はどういうものですか。こういう職業の方ははじめてなもので・・・』と質問されてしまいます。
”またかー”と思いつつ、
『お客さんからの依頼に応じてお役所に対して手続を代行する業務で、司法書士が不動産等を扱うように、特許事務所は特許等の知的財産を取り扱います。』という感じの説明をしています。
いまいちピンと来ない感じで、さらに発明..意匠..商標..特許庁..出願書類..外国..弁理士...とかごちゃごちゃ説明を追加しているうちに、いい加減面倒くさくなって、少なくとも合法的な職業であることをアピールしつつ、“そちらで適当に調べて下さい”と言わんばかりに『弁理士法に規定されている業務です』と投げやりな台詞を発して説明終了。
そのようなことが何度かありました。マイナーな仕事であることは構わないのですが、”いちいち説明が面倒じゃ”と思います。
一方、家庭でも、
以前は2才の娘に対して、朝出かけるときに『お仕事に行くよ』、夜帰ってきたときに『お仕事行ってきたよ』と答えればそれで納得してくれたのですが、最近は『なに仕事?』『どこ仕事?』『なにしてきたの?』と突っ込んだ質問がされるようになりました。
それに対して、『名古屋に行ってきたんだよ』『電車乗ってきたよ』『お弁当食べてきたよ』というようにはぐらかした返答をしたり、苦し紛れに『机の前で椅子にずっと座っているんだよ』『ずっとパソコンを見ているんだよ』と答えるありさまです。
前述のように大人相手でも業務内容の説明に苦労するのに、2才の娘に何をしているかをどう伝えてよいのかさっぱり分かりません。
同業者の皆様はお子様に対してどのように仕事内容を説明しているのでしょうか?