Knowledge Partners 弁理士法人【名古屋の特許事務所】

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人工知能関連技術に関するWIPOの統計

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WIPOが人工知能に関連する技術動向のレポートを発表しました。

 要約によると、人工知能関連技術の特許出願は急増しており、半分以上が2013年以降の公開だそうです。この統計は非常に納得感があります。特許出願に関しては現在もブームの最中のように感じます。弊所でも人工知能関連技術の出願をお手伝いするケースが増えていますので。
 また、人工知能関連技術のポートフォリオを有する出願人の上位30社のうち、12社が日本企業だそうです。これは意外でした。ニュース等で見る限り、人工知能関連技術のリーダーは米国、中国企業であり、日本企業は存在感がないとされていたように思えます。12社が所有するポートフォリオの件数は相当な数であり(日本企業首位の東芝は5000件超)、少なくとも数の上では非常に強力に見えます。人工知能関連技術の開発競争は基礎的な研究ではなく、実用化の段階に移っていると思われます。実用化でも日本企業には是非存在感を発揮していただき、世界を良い方向に変えていってほしいと思います。
 現在業界の繁忙期でして、なかなか時間を確保できませんが、このレポートには他にも興味深い事実がたくさん含まれていますので、時間ができたら詳細に読み込みたいと思っています。

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あけましておめでとうございます

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 新年あけましておめでとうございます。
 おかげさまで昨年もクライアント様から非常に多くのご依頼をいただきまして、非常に充実した年となりました。また、新しいクライアント様、勉強会を継続する仲間と出会うことができまして、私どもにとって非常に実りある年になりました。
 取扱件数も徐々に増加していまして、昨今の特許業界の事情を考えますと、大変ありがたく、弊所を信頼して頂いているクライアント様に貢献し期待にお応えすることでお返ししていきたいと、新年のこの機会に改めて肝に銘じているところです。

 本年もよろしくお願いいたします。

Knowledge Partners 特許業務法人 一同

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第3回自主研修

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 自主研修【クレームドラフティングスキル向上のための勉強会:名古屋市】の第3回目が終了しました。年末の多忙な時期にご参加いただきました皆様、お疲れ様でした。今回参加できなかった方、多忙な時期の開催になりまして申し訳ありませんでした。次回以降、またご参加ください。
 今回のお題は、機械関係の発明です。非常にシンプルな事例だったのですが、議論は活発に行われました。今回の事例では、発明の捉え方が参加者によって様々であったように感じました。制御系などの発明と違って、機械関係では執筆者による差が大きくなるのかもしれません。「何が必須要素なのか」という最も重要なポイントに差が生じ易いのであれば、この点は、実務上気をつけるべき点になるように感じました。ある弁理士が理想的と思う請求項が他の人から見ると理想的ではなく、このような認識の相違が生じやすいのであれば、機械系の発明においては特にクライアントとよく相談し、どういう請求項にすべきであるのか丁寧に合意しておく必要があるように思えます。また、特許事務所内で、ある弁理士が他のトレイニーの請求項をチェックする場合、一方的に修正するのではなくトレイニーがどういう意図で請求項を作成したのか良く確認しながら進めるべきと思いました。
 比較的人数が少なかったことも影響しているかもしれませんが、今回の自主研修ではこれ以外にも興味深い議論をすることができました。

 さて、次回は、少し前に話題になったビジネスモデル特許を取り上げようかと考えています。年度末に向けて業界は非常に多忙になりますので、次回は4月に開催する予定です。

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自主研修【クレームドラフティングスキル向上のための勉強会(第3回):名古屋市】

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 自主研修の第3回目の告知です。
 自主研修が軌道に乗りつつあります。できる限り2ヶ月に1回程度のペースで続けたいと思います。第3回目は年末開催になりますし、繁忙期も始まりつつありますのでどの程度の人数が集まるのか少し不安もありますが、下記の日程で予定しています。

 今回のお題は機械関係です。機械関係であれば多くの分野の実務家が関係すると思います。多くの実務家に役立つ議論をしたいと考えています。

 参加希望を表明していただいた方は電子掲示板に招待致します。お申し込みの際には参加を希望する旨とご自身のメールアドレスとを記載したメールを下記宛先に送信してください。サンプル明細書は自主研修開催日の1ヶ月ほど前に電子掲示板にアップロードしますので、参加者は電子掲示板を通じてサンプル明細書をダウンロードしてください。
 クレーム案は開催日の3日前までに電子掲示板にアップロードしてください。参加者は一通り目を通した上で討論会にご参加ください。
 電子掲示板には当日の議論の内容も随時書き込んでいきます。後日、議論の内容を確認したり、検索したりできるようにすることを目的にしています。

 第3回研修会は以下の予定です。
●日時
2018年12月21日(金)18:30~20:30頃 
●場所
弁理士会東海支部
●サンプル
機械関係
●メール宛先:岩上アットマークを小文字のアルファベットに置換してください(ウェブサイトのcontactからお申し込みいただくことも可能です)。
岩上アットマークknowledgepartners.jp
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岩上渉:052-223-2116

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量子コンピュータ関連技術の特許出願統計

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 量子コンピュータ関連技術の特許出願について統計をとってみました。
 ここ数か月のニュースを見ていますと、人工知能関連のニュースはずいぶん少なくなってきたように思えます。ある開発者さんからは、人工知能で実現できることと実現できないことが少しずつ分かってきたと聞きました。一時期のブームは終了し、より現実的なフェーズに移行したのでしょうか。そういえば、人工知能について流行期が終わり、幻滅期に差し掛かったというニュースもありました。

 私は、弁理士という職業柄、最先端のあらゆる技術に興味がありまして、以前から量子コンピュータが気になっていました。
 そこで、量子コンピュータ関連の特許出願の動向を調べてみました。統計は、以前人工知能関連技術について実施したものと同様の手法です。(公開年AND量子コンピュータ)で得られた件数を集計しました。検索にはJ-PlatPatとUSPTOのPatent Application Full Text And Image Databaseを使用しました。例えば、米国であれば、公報全文にquantum computerが含まれる2016年公開の出願を、(PD/1/1/2016->12/31/2016 and SPEC/” quantum computer “)というパラメータで検索しました。
 このような検索では、一言「量子コンピュータで実現してもよい」と書いた程度の明細書もヒットしますので、検索結果から多くのことを抽出できるとは思いませんが、それでも出願動向はわかるのではないかと考えています。
 結果は図1です。棒グラフは量子コンピュータというキーワードを含む出願の公開件数であり、数値は左の縦軸で示されています。折れ線グラフは棒グラフで示された公開件数をその年の全公開件数で除して規格化した値であり、数値は右の縦軸で示されています。


 まず、日米双方で出願件数が少ないことに驚きました。最近ですと2020年ごろまでにIBMやGoogleが量子コンピュータのクラウドサービスを始めるというニュースが報じられるなど、新聞等で量子コンピュータのニュースを見ることも増えてきました。そして、それらのニュースは、基礎研究段階を終え、実現が近づいているというニュアンスで報じられることも多いです。
 それなのに、日本で50件以下、米国で300件以下の公開数って。。。実際には、まだ技術的なブレイクスルーがなく、実現に必要な要素技術の開発もまだまだ先になるというフェーズなのでしょうか。
 日米の差に着目すると、全期間にわたって米国における公開件数が日本における公開件数を圧倒しています。例えば、2016年を見ますと、日米の件数は16件、204件であり、12.75倍もの差があります。この年の米国の公開件数は日本の公開件数の1.68倍でしたので、全産業分野での公開件数の比をはるかに超える差がついてしまっています。ちょっとした衝撃です。今回の検索結果が日米の技術力の差を正確に示していると言う気はありませんが、日米において量子コンピュータの開発成果に埋めようのない差がつくかもしれないという危惧は生じます。
 また、2016年の16件という公開件数は、日本国内でほとんど研究成果が出願されていないといえそうな数値です。一昔前までは、量子コンピュータの基礎的な研究において、日本の研究者がある程度の存在感を持っていたと思うのですが、今はどうなってしまったのでしょうか。
 特許の統計を集計していると、ほとんどの場合、日本の出願は、2008年頃のリーマンショックの影響で出願数が激減し、その影響が現在でも色濃く残っていることが示唆されます。量子コンピュータの研究や出願もおそらく不況の影響を受けたのだと思いますが、それにしてもこの存在感のなさは衝撃です。まさか、日本での研究成果が日本で出願されず米国のみで出願されているってこともないでしょうし。。。詳細は把握していませんが、量子コンピュータについてもAIと同様に日米で埋めがたい差がついてしまうのではないかと心配になります。私は、理学部の物理学科を卒業し、工学部の応用物理系の大学院を修了しました。その頃、主な科目の中で量子力学が一番楽しかったと記憶しています。いかにも大学で扱う物理のような気がしてまして。弁理士となった後、いつの日か量子コンピュータの出願に携わる日が来ないだろうかと期待していたのですが、上述の検索結果を見ると当面そういう日は来ないように思えますね。。。

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第2回自主研修

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 自主研修【クレームドラフティングスキル向上のための勉強会:名古屋市】の第2回目が終了しました。前回参加者に加え、若干名の新規参加者がいらっしゃいまして合計9名の弁理士で研修を行いました。企業内弁理士4名、事務所所属弁理士5名でした。
 今回のお題は、ネットワーク関連発明です。サーバ+クライアント(+その他)を含むシステムに関連する発明の場合、発明の名称、構成要件をどのように定義し、誰を侵害者として想定するかということを中心に議論を行いました。方向性としては大きく2種類あり、それぞれの方向性について自身が執筆したクレームに言及しながら自身の考え方を述べるというスタイルで議論を行いました。議論の結果、各方向性での考え方が整理できたように思えます。今後、この議論をきっかけに思考を進めて実務に役立てたいと思います。
 第1回に引き続き、活発に議論ができました。やはり、向上心のある方々と議論するのは楽しいし、ためになります。一方で、この研修会の課題も浮かび上がってきました。各参加者が実際にクレームを執筆することでお題に対する自分の考え方や課題、論点を深く考えることができますので、活発に議論できますが、議論の結果、結論を導くのが難しいです。複数の実務家の知識を集めることで知識や考え方に多様性を持たせることはできるのですが、その結果、実務上の指針を導くことができません。結論がない題材を使っている以上しかたがないのかもしれませんが、少し別の方向のお題も加えていく必要があるかもしれません。実務書を読むとか、判例をよむとか、包袋記録を用意して議論するとかが考えられます。いずれにしても、今後は参加者で相談し合いながらより効果的な学習法を探っていこうと考えています。

 次回以降も参加者を募集していきますので、興味のある方は是非ご参加ください。

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自主研修【クレームドラフティングスキル向上のための勉強会(第2回):名古屋市】

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 今月から始めました自主研修の第2回目を企画しています。
 先日弁理士会から告知されましたが、当ブログでも告知内容を掲載致します。第2回目からの参加でももちろん歓迎致します。既に数名の方に参加を表明して頂いており、第2回目から参加される方もいらっしゃいます。

 今回のお題はネットワーク関係です。第1回目の参加者の方から提案して頂いたお題です。ネットワークを介して複数の装置が連携する場合にどのような戦略で請求項を立てるべきか、といったあたりが議論の対象になりそうですね。

 参加希望を表明していただいた方は電子掲示板に招待致します。お申し込みの際には参加を希望する旨とご自身のメールアドレスとを記載したメールを下記宛先に送信してください。サンプル明細書は自主研修開催日の1ヶ月ほど前に電子掲示板にアップロードしますので、参加者は電子掲示板を通じてサンプル明細書をダウンロードしてください。
 クレーム案は開催日の3日前までに電子掲示板にアップロードしてください。参加者は一通り目を通した上で討論会にご参加ください。
 電子掲示板には当日の議論の内容も随時書き込んでいきます。後日、議論の内容を確認したり、検索したりできるようにすることを目的にしています。

 開催日時は平日夜を想定しており、可能な限り2ヶ月に1回程度のペースで続けたいと考えています。

 第2回研修会は以下の予定です。
●日時
2018年10月19日(金)18:30~20:30頃 
●場所
弁理士会東海支部
●サンプル明細書
ネットワークに関連した技術
●メール宛先:岩上アットマークを小文字のアルファベットに置換してください(ウェブサイトのcontactからお申し込みいただくことも可能です)。
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第1回自主研修

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 以前から企画していました自主研修が終了しました。合計6名の弁理士で研修を行いました。企業内弁理士3名、事務所所属弁理士3名でした。当日は、サンプル明細書から作成したクレーム案を題材にして全員で議論を行いました。主に、構成要件の決め方、発明名称の決め方、クレームを作成する際に意識すること(意識して避けること等)、カテゴリ毎の工夫、特定の文言を使うときのコツなどを議論しました。今回は最初でしたのでクレームの具体的な表現について深い議論をするよりも、クレーム作成の基本姿勢について各人の考え方を共有することを意識して議論を進めていきました。
 自身のスキルを向上させたいという意識を持った弁理士が集まっていますので、活発に議論できましたし、貴重な情報を共有できました。また、私自身は今後も継続していきたいと思えるような内容の議論ができたと考えています。議論の内容は、参加者が閲覧可能な電子掲示板にアップロードしていきます。数年後にはこの掲示板が価値のある知識データベースになるように運用していきたいです。
 次回以降は、もう少し個別のクレームの内容について深い議論を進めていきたいと考えています。次回以降も参加者を募集していきますので、興味のある方は是非ご参加ください。

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自主研修【クレームドラフティングスキル向上のための勉強会:名古屋市】

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 自主研修を企画しています。
 今回は弁理士会の自主研修のスキームを使わせていただいています。先日、参加者募集の告知が行われましたが、おかげさまで数名の申し込みをいただいています。弁理士会の広報の力をお借りして良かったです。このブログでも告知内容を掲載致します。興味のある方がいらっしゃいましたら是非ご参加ください。

 当研修では、弁理士のクレームドラフティングスキルを向上させることを目指しています。
 特許クレームのドラフティングスキルが多くの弁理士にとって最も重要なスキルであることに疑いはないと思います。
しかしながら、日々の業務において、クレームの質や書き方等を振り返ったり、他の弁理士の意見を聞いたりする機会は意外に少ないのではないでしょうか。
 特に、一定の経験がある方や、議論が発生しにくい環境にいらっしゃる方、知人の弁理士が少ない方などにおかれましては、クレームの質を向上させる機会を設けたくても難しいと思います。
 そこで、今回、クレームドラフティングスキルを向上させるための自主研修会を企画致しました。
 基本的には、予め用意されたサンプル明細書に基づいて参加者が討論会までにクレーム案を作成し、何人かのクレーム案を討論対象とします。討論対象のクレーム案の執筆者がクレーム案の作成意図等を発表した後に、各参加者が討論することでクレームの質を向上させるためのアイディア、テクニック、多面的な視点等を共有したいと考えています。批判し合うのではなく、建設的な提案をし合う同僚、友人のような関係を目指したいと思っています。

 技術分野は限定しませんが、初回は自動運転関係の明細書をサンプル明細書にします。参加希望を表明していただいた方には事前にサンプル明細書をお送りしますので、お申し込みの際には参加を希望する旨とご自身のメールアドレスとを記載したメールを下記宛先に送信してください。クレーム案は開催日の3日前までに下記宛先に送信してください。送信していただいたクレーム案は、開催日の2日前に参加者全員に配布します。参加者は一通り目を通した上で研修会にご参加ください。
 開催日時は平日夜を想定しており、可能な限り2ヶ月に1回程度のペースで続けたいと考えています。

 第1回研修会は以下の予定です。
●日時
2018年8月3日(金)18:30~20:30頃 
●場所
弁理士会東海支部
●サンプル明細書
自動運転関係
●メール宛先:岩上アットマークを小文字のアルファベットに置換してください(ウェブサイトのcontactからお申し込みいただくことも可能です)。
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「特許審査ハンドブック」の改訂

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 2018年3月に特許・実用新案審査ハンドブックの改訂が公表されました。
 主に、コンピュータソフトウェア関連発明の審査基準の改訂とそれに伴う審査ハンドブックの改訂が行われたようです。
 特許庁のウェブサイトには改訂ポイントがまとめられています。
http://www.jpo.go.jp/shiryou/kijun/kijun2/pu-kijun_kaitei_h27.htm

 審査ハンドブックの付属書Bに関する今回の改訂で私が注目した点をメモしておきたいと思います。
●付属書B第1章2.1.1.2
 留意事項(iii)には、「請求項に、使用目的に応じた特有の情報の演算又は加工が記載されている場合には、ハードウェア資源として「コンピュータ(情報処理装置)」のみが記載されている場合であっても、、、ハードウェア資源とソフトウェアとが協働した具体的手段が記載されていると解釈される」という趣旨の記述があります。要するに、処理が具体化されていれば、請求項にハードウェア資源としてコンピュータを登場させることでコンピュータソフトウェア関連発明として認められると考えて良いようです。これは、実務家の感覚としては当然で、以前の審査基準に書かれていた例のようにCPUやメモリ等を登場させることに違和感がありました。コンピュータを登場させずに、どのように請求項を書くのか考えることはありましたが、CPUやメモリ等を請求項に登場させようと考える実務家は少なかったのではないでしょうか。いずれにしても、今回の留意事項(iii)によれば、「コンピュータ+具体的な処理」で「ハードウェア資源とソフトウェアとの協働」を表現できることが明示されたため、この書き方にしておけば無用な拒絶を受けないことは確認できました。

●付属書B第1章2.1.2
 例1の(説明)において、請求項の「末尾に「キャラクタ」と記載されていても「データ」であることは明らかである。」と記述されています。特許庁としては、データ構造クレームの末尾が「キャラクタ」となっているような「データ構造」クレームを作成可能と考えているようです。

●付属書B第1章2.2.3.3
 ここでは、いくつかの例について進歩性が肯定又は否定される例が説明されています。例1,2,4,5が人工知能関連の技術でした。
・例1
 請求項:鋳造された鋼片を再加熱した後に、圧延、冷却して製造する鋼板の溶接特性を予測する方法であり、鋼の成分及び製造条件を入力値とし、ニューラルネットワークによって鋼板の溶接特性を推定する
 主引用発明:鋼の成分及び製造条件の実績値を入力値とした数式モデルを用いて鋼板の溶接特性を予測する方法
 副引用発明:所定の入力値を用いてニューラルネットワークモデルによってガラスの材質を推定する方法
・例2
 請求項:心筋断面の心筋壁を小領域に分割した画像を入力し、ニューラルネットワークによって壊死心筋組織を含んでいるか否かを判定する
 主引用発明:心筋断面の心筋壁を小領域に分割し、小領域の画像から各小領域に壊死心筋組織を含んでいるか否かを小領域の画像の平均濃度により判定するシステム
 副引用発明:画像を小領域に分割し、当該小領域に対して所定の特徴の有無を判定するように学習させたニューラルネットワーク
・例4
 請求項:内燃機関の振動センサで検出した振動検出信号を入力値としたときニューラルネットワークから出力されるシリンダ内圧推定信号をシリンダ内圧とみなす内圧検出方法において、学習時及び学習後の入力値のサンプリングレートを内燃機関の回転速度に応じて変更する
 引用発明:学習時及び学習後のサンプリングレートを一致させることは特定するものの、内燃機関の回転速度に応じて変更することは特定しない
・例5
 請求項:加熱炉内の圧力のデータと、煤煙の温度のデータと、煤煙中のCO2濃度及びO2濃度のデータとをニューラルネットワークの入力データとして煤煙中のNOx濃度を推定する
 引用発明:煤煙の温度のデータと、煤煙中のCO2濃度及びO2濃度のデータとを入力データとすることは特定するものの、加熱炉の圧力データを入力データとすることは特定しない

 結論としては、例1,2において進歩性なし、例4,5において進歩性ありとなっています。
 例1,2では、主引用発明と副引用発明との間で課題が共通、機能又は作用も共通であり、有利な効果や阻害要因は存在しないとされています。この前提のもとで、主引用発明と副引用発明とを組み合わせることができ、当業者であれば容易に請求項に想到するというロジックです。例1,2では、主引用発明と副引用発明とを組み合わせると請求項と同等の構成になりますので、進歩性が否定されるのは当然ですね。主引用発明と副引用発明との組み合わせがこれほど請求項と一致していれば進歩性がないのも当然であり、人工知能特有の論点があるというわけでもありません。
 ただし、例1,2においては、ある入力値をニューラルネットワークに入力して特定の特性を推定するという点を権利化する請求項となっており、私自身は、以前も述べましたようにこのような請求項が人工知能関連技術の権利化において有効であると考えています。ブラックボックスの部分ではなく、侵害特定容易な部分を請求項にすべきと思うからです。例1,2は、主引用発明と副引用発明の組み合わせが請求項そのものでしたが、多くの場合は、主引用発明と副引用発明の組み合わせと請求項との間に僅かであっても差異があると考えられます。差異があるならば、この差異によって生じる効果が引用文献から予想できない効果であるといえるように請求項を作成することで、進歩性ありとされる可能性を高められると考えます。
 例5は、まさにこの例と言えますね。請求項においては、圧力のデータをニューラルネットワークに入力しますが、引用発明では圧力のデータを入力データとすることは特定していません。このように、入力データの内容が先行技術と異なれば、その点で進歩性を獲得する可能性があります。従って、人工知能関連技術の権利化実務においては、入力データに特徴があるか否かを明らかにし、特徴があるならば請求項とするという作業が重要になると考えられます。
 なお、例5の場合、発明者さんは機械学習に関する技術のみを発明したのでしょうか。私は、この場合においてより広い権利の確保を検討すべきと考えています。例えば、例5であれば、加熱炉内の圧力のデータと、煤煙の温度のデータと、煤煙中のCO2濃度及びO2濃度のデータとを入力データとし、煤煙中のNOx濃度を出力する数式モデル等の発明を完成させることが可能かもしれません。つまり、機械学習の発明においては、機械学習を使って入出力関係を明らかにしたが、入出力関係が明らかになった後には、機械学習を使わなくてもこの関係を自然界に適用可能である場合があり得ます。私は、このような発明の権利化も常に視野に入れておくべきと考えています。機械学習のみですと権利としては狭いですし、侵害特定も容易ではないと考えるからです。

 例4は、ニューラルネットワークへの入力値をサンプリングする際の工夫を請求項で表現しており、引用発明には同等の工夫が見られないという例です。ニューラルネットワークに対する入力値と、ニューラルネットワークからの出力値とが公知である場合、入力や出力のみに着目した請求項で進歩性を獲得するのは当然困難になると考えられます。この場合、例4のように、入力データの準備として工夫した点など、入力値自体と異なる要素に着目して権利化するのも一つの良い実務になると考えられます。特に、CNN(Convolutional Neural Network)などにおいては、多くの場合、入力データのフォーマットが単なるRGBデータであり、特徴のない画像データであるという状況であると考えられます。このような場合、入力データの加工や出力データの解釈などにおける特徴を探さざるを得ないことは多いように思えます。人工知能関連技術を権利化する際には、検討すべき方向性として常に念頭に入れておくべきと考えられます。

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