Knowledge Partners特許業務法人では、引き続き、弁理士、特許技術者を募集しております。10月中をめどに候補者を絞りたいと考えておりますので、もしご興味をお持ちの方がいらっしゃいましたら是非お早めにご応募ください。
さて、今回は弊所のOJTスタイルを紹介します。
弊所では、コーチ弁理士がコーチ対象者の全執筆案件をチェックします。弊所では明細書マニュアルが作成してあり、明細書に書くべき事項、書いてはいけない事項等が共有されていますので、基本的にはこのマニュアルに沿って明細書を修正し、議論します。コーチ弁理士がクライアント様の要求レベルに達していると判断するまで、修正および議論が繰り返されます。
議論の過程では、クレームの書き方、実施形態における構成や効果の書き方など基本的な事項も解説しますが、OJTの多くの時間は、品質を高めるためにこのようなことを書くべきではないか?という指摘や議論に費やされます。弊所では、明細書に充実した書き込みができなければ、クライアント様に信頼されないと考えているからです。
また、弊所ではクライアント様から明細書の品質評価をいただいていますので、品質評価を参考にして品質の向上に取り組みます。少なくとも、低評価となった原因をつぶし、高評価となった要因を伸ばすようにしていきます。このような品質評価のフィードバックをするためには、クライアント様の考えを正確に把握する必要があります。OJTの過程ではクライアント様の考えを引き出すための施策やスキルも学んで頂くことになります。
さらに、コーチ対象者の業界経験が短い場合には、審査基準や基本書(例えば、Faber on Mechanics of Patent Claim Drafting)をコーチ弁理士と一緒に読んでいくことになるでしょう。
OJTを開始した当初は明細書を何度も書き直すことになりますが、一般的には、数年で弊所のスタイルを身につけていただけるようで、大きな修正が必要になるケースは減ってきます。明細書をかけるようになり、コーチ対象者がクライアント様の信頼を獲得できれば、コーチ対象外となります。コーチ対象外になると、一弁理士としてクライアント様と向き合っていただくことになります。この段階ではより大きな責任が生じますが、弁理士としての醍醐味を大いに味わっていただくことができますので、きっと充実した毎日になると思います。
もちろん、経験があり、既存のクライアント様の信頼を勝ち取ることができた方は、短期でコーチ対象外になることも想定されます。この場合、ご自身が理想とする進め方でクライアント様に貢献していただければよいと考えています。
前回のブログでもお伝えしましたが、Knowledge Partners特許業務法人では、引き続き弁理士、特許技術者を募集中です。
近年パートナー制を採用する事務所が増えていますね。
弊所でもパートナーになる意志のある方を歓迎します。
今回は私どもが考えるパートナー制について述べたいと思います。
Knowledge Partners特許業務法人では、全ての経営事項を全パートナーで相談し、合意して進めるべきであるとは考えていません。
むしろ、あまりに合意を重視すると経営判断のスピードが遅くなるなどの弊害が大きいため、各パートナーができるだけ独自の判断をしながら経営を進められる組織でありたいと考えています。
つまり、あるパートナーとそのチームがある顧客から信頼され期待されている場合、この顧客の期待に応えるために必要な施策(品質管理、人材獲得、広報等)は、このパートナーが考え、リスクを取って実現していくべきと考えています。
そして、Knowledge Partners特許業務法人は、各パートナーからみてリスク低減のよりどころになれると考えています。具体的には、Knowledge Partners特許業務法人には、既に事務系、技術系の人材が在籍していますし、事務ノウハウもあります。また、幸いなことに、Knowledge Partners特許業務法人を信頼して発注してくださる顧客もいらっしゃいます。各パートナーでこれらの既存の資産を共有しながら、特定の顧客についての経営判断が必要になる場合には当該顧客が信頼しているパートナーがリーダーシップをとって決定していく。このような状態が理想です。
経営判断のスピードを速くするために、一人の経営者が組織全体を経営すべきという考え方もあるかもしれません。しかし、我々は、一人で組織全体を経営することが理想とは考えません。一人で経営する場合、業務量が増えると経営者が実務家ではなくなってしまいます。我々には、実務家ではない弁理士が顧客のニーズに応えながら経営をすることは不可能と思えるのです。世の中には経営のプロもいるため、プロが経営する形態は一つの方向性かも知れませんが、弁理士が経営主体となる特許業界においてそのような話にリアリティーは感じられず、ファンタジーのように思えてしまうのです。
そんなわけで、弊所ではパートナーができるだけ独自に経営判断できる環境を創りたいと考えており、パートナーとして自身の責任で組織を運営したい方を歓迎します。興味のある方は是非お声かけください。
Knowledge Partners特許業務法人では、ともに働く人を募集中です。
おかげさまでこのところ多忙でして、久しぶりに本気で求人中です。
今後1年ぐらいで1,2名の技術者に入所していただきたいなと思っています。
応募詳細は当ウェブサイトの求人ページや各種媒体の求人広告をご覧頂きたいです。求人広告に書きました応募資格の全てを満たしていなくても、全てを満たすように行動する方であれば歓迎です。
ここでは、私どもが求める人物像や弊所の雰囲気を述べたいと思います。
・私たちがともに仕事をしたいのはこんな人。
高品質の仕事をするための努力を惜しまない人。
高品質とはこういうことだ。と語れる人。
でも品質の良し悪しは顧客が決めるものだと知っている人。
技術的に難しい仕事を依頼されると、むしろ喜んでしまう人。
今までやってきたことでもおかしいことは自ら変えていける人。
・Knowledge Partnersはこんな所。
総勢5名のこぢんまりとした事務所です。
業務柄、仕事中の会話は少ないですが、必要に応じて分け隔てなく会話します。
弁理士のことを先生と呼ぶ人はいません。
顧客との打ち合わせがなければ背広は着ません(もちろん着てもらってもかまいません)。
飲み会など業務時間外の交流への参加が強要されることはありません。
というか最近はほとんど飲み会がありません。
だからといって仲が悪い訳ではありません。
以前はかなり積極的に交流していました(所員同士で楽器のセッションをしたこともありました)。
私(岩上)や他の所員が子育て中であるなどの理由で近年飲み会が減ってしまいましたが、私自身お酒は大好きなので、子供の成長につれて私も社交の場に復帰しつつあります。
オンとオフの切り替えを大事にしています。
この業界は繁閑の差が激しいので、ヒマな期間には着手できる案件がなくなってしまうことがあります。こんなときKnowledge Partnersメンバーはすぐに帰宅します。だらだらと事務所に居ることはありません。
いかがでしょうか?
思いつくところを書いてみましたが、質問等あれば気兼ねなくお問い合わせください。
応募するかどうか分からないけれども興味はあるので事務所を見学したいという方も歓迎です。
本当でした。少なくとも件数では。
人工知能関連技術の開発競争では、米国企業が突出して進んでおり、日本企業は遅れをとっている。多くの人はこのような印象を持っているのではないでしょうか。でもこれは本当でしょうか?多くの人がAと言っていても、本当はBかもしれないと考える傾向にある私は自分自身でこの印象が正しいか検証してみたくなりました。私は特許業界で仕事をしてますので、特許出願の統計からこの印象が正しいかどうか探ってみました。具体的には、人工知能関連の技術を示唆するワードを含む明細書の公開件数を日米で比較してみました。
以下の棒グラフは(公開年ANDキーワード)で得られたデータの統計です。検索にはJ-PlatPatとUSPTOのPatent Application Full Text And Image Databaseを使用しました。例えば、米国であれば、公報全文にartificial intelligenceが含まれる2001年公開の出願を、(PD/1/1/2001->12/31/2001 and SPEC/” artificial intelligence “)というパラメータで検索しました。
図1はニューラルネットワーク、図2は人工知能、図3は機械学習、図4は強化学習がキーワードです。日本出願の検索結果は、以前のエントリでの統計を流用しています。各グラフで横軸は公開年です。左縦軸は検索された件数(棒グラフ)を示しており、右縦軸は検索された件数を全公開件数で除した値(折れ線グラフ)を示しています。特定のキーワードを含む明細書の件数が各国企業の技術力を反映しているという短絡的な結論にはならないと思いますが、少なくとも各国での技術開発の動向や開発競争の熾烈さ等は分かるかと思います。
どのキーワードでも、公開件数は米国における件数が日本における件数を大幅に上回っていました。例えば、2016年においては、ニューラルネットワークで6.4倍、人工知能で22.5倍、機械学習で8.7倍、強化学習13.7倍も多くの出願が米国において公開されていました。どのキーワードでも米国では近年顕著に件数が伸びていますが、日本において件数が伸びていえるキーワードは機械学習のみでした。
機械学習というキーワードを含む日本出願の公開件数が近年顕著に増加しているのは確かであり、人工知能関連技術の特許出願ブームが起きていると考えられることは以前のエントリで述べましたが、米国出願と比較すると規模が極めて少なく、双方を同じグラフにプロットするとブームなのか否かわからないレベルです。
15年ぐらい前、日本の企業は特許出願件数で他国の企業を圧倒していると言われていましたが、人工知能関連技術については、2008年の景気後退以前から米国における公開件数が日本における公開件数を圧倒しています。そして、近年ではより顕著に差がついています。日本企業は米国出願もしていますし、日米の公開件数の差が日米企業の開発力をそのまま示しているとは言えません。また、特定のキーワードを含む明細書の公開件数だけで多くを語ろうとは思いませんが、少なくとも、人工知能関連特許の主戦場は日本ではなく米国であることは確認できたように感じます。人工知能関連技術の開発企業は、有望技術が開発された場合に米国に出願するのが原則なのでしょうか。
日米の公開件数に圧倒的な差がついているので、このような圧倒的な差を認めたくない気持ちから、各年の検索結果を各年の全公開件数で規格化してみました。近年、日本では年間出願件数が減っており、米国では増えています。図1~図4における米国での公開件数の増加と日本での公開件数の低迷は、年間出願の増減である程度説明できるのではないかと考えたわけです。そこで、検索された件数/年間公開件数を年毎に算出し、折れ線グラフとしてプロットしました。ところが、やはり日米の件数に圧倒的な差がありました。例えば、機械学習を含む明細書の公開件数/年間公開件数を2016年で見てみると、米国では0.018であり約2%もありますが、日本では0.0034であり、たったの0.34%でした。人工知能関連技術が全産業の中で占める地位が日米では大きく違うことが分かりました。
以上のように日米で比較すると、日本においては人工知能関連技術の公開件数が米国より圧倒的に少ないことが分かりました。そうすると、将来的に米国で特許になっている技術の多くが日本で特許になっていないという状況になるように思えます。この場合、日本で国内限定のサービスを提供する限り、非権利者が比較的自由に活動することができ、米国でサービスを提供する場合と比較して非権利者に非常に有利ですね。
日本はデフレに苦しんでいますが、それでもまだGDPが世界3位の国です。このような市場規模の大きい国で人工知能関連技術の特許網が手薄な状況は、今後も続くのでしょうか。あるいは、日本においても人工知能関連技術の出願が増加していくのでしょうか。出願統計を定期的にチェックしたいと思います。
google アシスタントを試してみました。
最近自分のスマートフォンでgoogle アシスタントが使えるようになりましたので、少し試してみました。
google アシスタントは、音声または文字によって質問を入力すると、google先生が回答を返してくれるプログラムです。スマートフォンの場合には音声入力を手軽に利用できますので、音声入力を使いながらgoogle アシスタントを試してみました。
質問を音声で入力してみたところ、ほぼ完璧に入力文を認識しました。もはや音声認識精度に驚く時代ではないのかもしれませんが、実際に試してみると、ものすごく高い精度にやっぱり驚いてしまいます(ただし、例外もありました)。
「日本の面積を教えて」、「特許って英語でなんていう?」などと言った質問には即座に完璧に答えてくれます。便利ですねえ。
では、特許業界のアシスタントとして使えるでしょうか?
「特許権の存続期間を教えて」、「特許権の無効理由を教えて」などいろいろ質問してみましたが、認識した文書をgoogle検索した結果が返ってきただけでした。さすがに無効理由から条文を教えてくれるとか、条文に規定された無効理由を教えてくれるなんてことはありませんでした。こんなことができる時代は来るのでしょうか。
いろいろ試していくうちに、興味深いことも分かってきました。google アシスタントが私のこと(私のスマートフォンのデータ)を知りすぎているため、音声認識や提示内容に無用なバイアスがかかってしまうことがあるようです。
例えば、私の名前を音声認識させようとしたのですが、何度やっても失敗しました。認識結果が妻の名前になってしまうのです。音は全く違うのですが。。。私のスマートフォンに私の名前よりも妻の名前の方が多く保存されていたからなのでしょうか?例えば、メールの宛先など。理由は定かではありませんが、この例のように、いつまでも期待した認識結果にたどり着かないことがありました。
さらに、自分の知識外のことを知るためにgoogle アシスタントに聞いているのに、自分が知っていて当然の情報を返してくることがありました。例えば、「AIで有名な人を教えて」という質問にジェフリーヒントンさんのことを書いたウェブサイトを返してきたので、続けて「ジェフリーヒントンさんの特許出願を教えて」と入力してみました。できればgoogle patentsの検索結果を出力してほしかったのですが、Wikipedia の次に私たちのウェブサイトのブログのページを提案してきました。私たちはスマートフォンでの表示が適正であるのか否かを定期的にチェックしますので、おそらくchromeに履歴が残っていたのでしょう。しかし、それらは私たちが熟知していることなので、むしろ提案不要なのです。自分の知識外のことを知るためにgoogle アシスタントに聞いているのですから。
google アシスタントは多くの場面で有用であり、試していてとても楽しかったですし、その多才ぶりに驚きました。今後も使いたいと思いますが、上述のように、一部においては改善が期待されるようです。google関連のサービスはものすごい速さで進歩しますので、いつの間にか改善してしまうかもしれません。定期的にウォッチしていこうと思います。
企業の未来を創る。
特許出願をする企業の目的の一つには、当然、こういう類いの目的があると思います。特許明細書には、基本的に現在より後の未来に利用される可能性のある技術が書かれていますが、その中には、ごくまれに相当に先を行っている技術があります。特許関連ニュースをウォッチしていると、ときおりこのような出願が話題になります。この米国明細書(14/975618)も一部で話題になっているようで、私も読んでみました。
明細書には、外郭の壁面にドローンが発着するプラットフォームおよび開口部が形成された高層ビルのような配送センターが書かれています。外郭の内部では人やロボットが作業するようです。実施形態には、ビルの形状やプラットフォームのバリエーションが多数開示されています。
なんというかすごく未来を感じます。私は直感的に手塚治虫氏のマンガを思い出しました。氏のマンガに出てきそうなフォルム、アイディアだからでしょうか。
amazonがドローンを使った配送の実験をしているということについては数年前から話題にはなっていましたが、配送センターの構造について独占排他権の獲得を目指し、出願に投資するのですから、おそらく実験しているだけというレベルを超えているのですね。ドローンでの配送なんて聞くと、私は、安全性の確保、法規制など、実現のために越えなくてはならない障害ばかりが思い浮かんでしまいますが、障害を考えるよりも先に実践してしまうamazonの行動力に頭が下がります。実現したら物流の世界が激変すると思うのですが、どうなりますかね。私が生きているうちにこの未来を覗いてみたいです。
特許出願において突き抜けた未来を提示する必要はないですし、むしろ、特許出願はそういうものではなく、直近5年~10年ぐらいの技術に独占排他権を得るためのものであると、私は思っています。しかし一方で、未来を見据えて実際に行動し、実績を積み重ね、特許も確保する企業に勝つのは難しいとも感じます。
先日、「IOT関連事業の知財による保護の現状と将来動向」というテーマの研修に参加してきました。IOT関連事業ではデータの利活用が重要になるが、現状ではITの超巨大企業がデータを握っており、独占による弊害が生じることを防ぐために産業構造審議会で法整備等の提案を行っていくなどといった話を聞くことができました。研修聴講中は、日本でも危機感をもって動こうとしている方々がいるのだなと感心していたのですが、帰宅後、紹介されていた報告書を見ていると、法整備等で独占を抑制することに期待するのは建設的ではないなと感じました。報告書には現状分析と今後の課題が書かれているのですが、多くの議題で「引き続き検討」という結論になっています。初読では少し期待外れだったのですが、法整備等は、現状分析、公平の観点での検討など、当然に時間がかかりますし、世界の変化に後追いで対処していくものであって、予見される変化に先んじるものではないですから、この類いの結論になるのはある意味当然でしょうか。
報告書を読み、思索する中で気づいたのですが、私は無意識のうちに強者に対する法規制を期待していたようです。しかしこれは、特許業界人としてよろしくないな、と考えるに至りました。先んじて行動し、実践し、投資した企業がビジネスで成功を収めた後に規制が過度に強化されるとイノベーションが促進されなくなってしまいます。規制強化を期待するのではなく、先手を打つことで競争優位性を確保する方がよほど建設的ですよね。特許業界人としては先手を打つことを狙っていく、常にそういうマインドであるべきでした。そういえば、研修会ではセンサー関係の技術で日本企業には優位性があるという話がありましたし、工場でのセンシングデータを利活用したスマートな物作りなどで日本企業が大量のデータを蓄え得る領域はまだあるという話も聞きます。まだまだ、データの収集で日本企業がイニシアティブを握れる余地はあると言うことでしょうか。私たちがまだ知らない未来を見せてくれる日本企業がどんどん現れることを期待したいですし、そういう企業のお手伝いをしていきたいと思います。
特許業界の皆さん、機械翻訳を使われたことはあるでしょうか?
私自身は、少しずつ利用するケースが増えてきました。外国のクライアントへのメールを英語で書くときに、英語の文書がすぐに浮かばなければ、日本語で文を作成し、google 翻訳やBing 翻訳で翻訳します。このようなスタイルで機械翻訳を利用しているとその精度に驚かされます。ほぼ完璧、と感じます。google 翻訳では表示された文書の単語をダブルクリックすると単語の意味や例文が出てきて辞書的にも使えるため、徐々に手放せないサービスになりつつあります。
特許業界に身を置いていると、やはり、機械翻訳が実務に利用できるのか気になります。そこで、機械翻訳を利用して、いくつか試してみました。この結果、
自分の英語能力では、
英語→日本語の翻訳については、自分で翻訳した方が速い。
日本語→英語の翻訳については、機械翻訳を援用した方が速い。
となりました。
英語→日本語については、以前から読もうと思っていた公報を利用して機械翻訳の質をみてみました。公報はUS 20170095925 A1です。これは、ディズニーによるベイマックス風のロボットの出願として一部で話題になっていた公報です。
翻訳のスピードは極めて速く、大半(90%以上)は文章の大意を把握できるクオリティで翻訳できているので、機械学習導入以前の翻訳ソフトウェアに比べると、非常に高性能になったように思えます。特に、google 翻訳はどんどん意訳するようで、そのスキルには驚かされます。
例えば、DETAILED DESCRIPTION OF THE PREFERRED EMBODIMENTS を【発明を実施するための最良の形態】と訳します。大量の学習データに基づいて機械学習しているとはいえ、この翻訳には驚きました。逐語訳の世界ではあり得ない翻訳です。米国明細書と日本明細書の対応関係を機械学習できていると言うことなのでしょうか?あるいは人手でチューニングするのでしょうか?
また、google 翻訳では請求項に含まれるtheを逐一前記に読み替えており、明細書の実施形態等に含まれるtheは無視されています。なんでしょうかこの特許業界のローカルルールまで熟知したような訳出は。このような翻訳が機械翻訳で実現されている現状には正直驚きました。
しかし、、、、残念ながら実務には利用しにくいと感じました。
まず、明細書の内容把握をする上で、5%でも意味の通らない部分があると文章をすらすらと読むことができず、意味不明の部分がでてくるたびに原文を確認する作業が必要になってしまいます。このようなことをするぐらいなら自分で読んだ方が速いと感じました。
さらに機械翻訳では、同一文書内の同一文字列を異なる言葉に訳すケースがあるようです。これは長文読解の際に致命的なように思えます。同じ意味の概念を異なる言葉で表現するというのは、特許明細書では最も避けるべき初歩的なミスですし、特許業界以外でも訳文内の異なる単語は異なる意味と解釈されるのが普通のように思えます。このような訳はgoogle 翻訳とBing 翻訳の双方で散見されます(例えば、US 20170095925 A1の0011内のrigid support element)。機械翻訳では同一単語を同一訳として出力する制約を設けるのが難しいとか、特殊な事情があるのでしょうか。
日本語→英語の訳は日常的に利用してまして、とても有用と感じます。主に、海外のクライアントへのメール(日本の特許制度や事務所料金等の問合せに対する返信等)を作成する際に利用します。これらの文書はそれほど長文ではないのですが、私の英語能力では、自分で一から英文を書くより、機械翻訳を使った方が何倍も速く文章を書き上げることができます。このような使い方において、機械翻訳はほとんどそのまま利用可能なクオリティと感じます。機械翻訳は、特許文書よりも日常会話的な文書の方が得意なのでしょうか。また、仮に修正が必要になったとしても修正作業は苦になりません。そもそも、日本語で文章を作成したとしても校正はしますので、このケースで英文に誤訳が5%程度含まれていたとしてもさほど作業量は増えません。
いずれにしても、この分野の技術革新のスピードは極めて速く、上述のようなローカルルールへの対応も実現できているため、英語→日本語の翻訳において私が感じている問題は近々解消するかもしれません。機械翻訳のレベルがもう一段上がったら、特許事務所内のクローズド環境で明細書を機械翻訳をすることで翻訳支援をする実務も可能になるかもしれませんので、定期的にチェックしていこうと思います。
先日、日経BP社主催の展示会を見てきました。
クラウド、セキュリティ、IOT、工場、VR等に関するセミナーや展示が行われていました。私は、クラウド、セキュリティ、IOT、工場に関心があり、それぞれのセミナーに参加しつつ展示をまわったのですが、弁理士から見ても非常に興味深いと思える話をたくさん聞くことができました。
IOT、工場関連では、やはりスマートファクトリー、ロボットへの人工知能の適用が話題になっていました。スマートファクトリーの実現には各社が取り組んでいるようで、実現の過程で重視すべきことなどが紹介されていました。例えば、スマートファクトリーはITとOT(Operational Technology)との融合によって実現されますが、一般的にはITの技術者とOTの技術者とでスキルセット、マインドセットが違うため、各部門の人材が協働し、うまく成果を出すための仕組み作りが重要なのだとか。
他にも、スマートファクトリーで気をつけるべきサイバーセキュリティの講演などがありました。先行者の経験を他者に伝達することで、産業、市場を立ち上げようとする試みが行われていたように思われました。スマートファクトリーについてはまだまだ成長初期なのでしょうか。成長初期であることや異なる分野の技術者の知見を融合することを考えると、スマートファクトリーの開発に際しては発明がたくさん生まれそうですね(この場合、出願すべきでない発明も多いように思われますが)。
ロボットへの人工知能の適用に関連した話題では、シンプルな機械学習をすることがトレンドになっているという話が興味深かったです。ロボットの稼働中にセンシングした情報で機械学習をする際、例えば、画像情報をエッジ側(ロボット側)で処理してしまい、最小限の画像情報だけをクラウドにアップロードして機械学習するとか、汎用的な作業に対応した機械学習をするよりもロボットの特定の作業に特化した機械学習をするとか、そういうシンプル化がトレンドだとおっしゃっている講演がありました。機械学習では大量のデータを集めて解析を行うことで人間に分からない推論を実施するという要望もあるように思えるのですが、この場合、リッチな情報を扱うことに利点があり、シンプル化の方向性ではありません。当然、いろいろな方向性はあるのでしょうが、今後、大きなトレンドが生まれることはあるのでしょうか。個人的にはシンプル化の方が面白いと思いました。シンプル化の際にどの情報を削り、どの情報を使うのか人為的に試行錯誤することもあるでしょうし、この段階で発明の余地があるように思えますので。
クラウドに関しては、あまり詳しくなかったこともあり、あるサービスのクオリティに驚きました。Google社が提供しているG Suiteというサービスには機械学習によるレコメンドが多用されており、例えば、プレゼン資料作成のアプリでは、テキストや写真を選択し、実行ボタンを押すと機械学習に基づいてクールなデザインをいくつもレコメンドしてくれるそうです。スプレッドシートのアプリでは、数百のデータについて「最も売上数の多い商品は?」などと自然言語で質問を入力すると、こういうグラフはどうですか?などと結果を返してくれ、そのグラフや統計に利用した式も提示してくれるそうです。このアプリでは、自然言語の解釈とグラフのレコメンドに機械学習が利用されているようです。プレゼン資料のデザインやスプレッドシートでの体裁決定などは業務本来の目的ではないため、これらを支援することで業務上発生する無駄を削減できるという講演でした。さすがですねえ。こんなことができれば業務上の生産性が向上するでしょうね。他のクラウドサービスでも似たようなことはできるのでしょうか?
機械学習で効率化できる作業は我々弁理士の日常業務の中にもたくさんありそうです。我々は大量の文書を扱いますので、機械学習を導入すれば検索業務はものすごく効率化できそうです。
弊所では以前から勉強会の参加者を募集しています。
お問い合わせを頂く機会が少ないので再告知します。
ブログでの告知に応募するのは障壁が高かったでしょうか。もしかしたら実務経験年数などで制限をかけたことで排他的な印象を与えてしまったでしょうか。とりあえず勉強会をスタートさせるのが大事と思いますので、実務経験年数等の制限はなくしてみます。特許業界の方であれば歓迎です。参加または見学してみて勉強会のスタイル、メンバーとの相性などを考えてみるというのも歓迎です。あるいは、飲み会等の交流をしてみてお互いの情報交換をすることから初めるというのもよいかもしれません。興味のある方がいらっしゃったら是非お問い合わせ頂きたいです。コンタクトページからメールを送っていただくか、ウェブサイト下部の電話番号にお電話いただけるとありがたいです。
特許業界の多くの方が、継続的に研鑽する必要性を感じていらっしゃると思います。何か勉強したいときに皆さんはどうしますか?普通は書籍等で自己学習するのではないでしょうか。それでも、自己学習が極めて非効率な学習領域は多いですよね。特許業界で、「請求項作成の際の考え方」などは自己学習が非効率な学習領域の典型と思います。そういうことを記述した書物が存在しないからです。日々の実務の過程で経験値が増えると当然スキルは上がっていくのですが、やっぱり効率が悪いです。自分の視点と異なる視点で評価できないからです。
今回の勉強会は複数人で議論することで多面的なものの見方を身につけることを目的にしています。楽しみながら効率的に学習できると思うのですがいかがでしょう?共感して頂ける方がいらっしゃいましたら是非お問い合わせください。
KickStarter。ご存じの方も多いと思いますがクラウドファンディングの1種です。
クラウドファンディングでプロジェクトを支援したことある方はいらっしゃるでしょうか。私は1回だけ支援したことがあります。レゴ(登録商標)を利用可能なプログラミング学習用のロボット(phiro)の開発を支援しました。当時は、プロジェクトが成功するまでソワソワしながら進捗を見守っていました。アイディアをリアルな物として具現化する起業家には頭が下がる思いです。お返しとして1台のロボットを頂きましたので、子供と一緒に遊んでいます。クラウドファンディングは、起業家がアイディア次第で自らの思いを実現できる仕組みとしてすっかり定着したようですね。起業家の選択肢を増やすという意味でクラウドファンディングが担う社会的意義はとても大きいと思います。起業家がいなくなると社会が停滞するでしょうから。
私自身の経験はさておき、先日KickStarter関連で興味深いニュースを目にしました。
BeeScanning
ディープラーニングで蜂たちを致死的な害虫から救う養蜂家作のアプリBeeScanning
なんでも、ミツバチのコロニーは1年で半数近く死に絶えてしまうことがあり、主な原因は寄生ダニなのだそうです。この寄生ダニによる被害は養蜂家にとって死活問題なのですが、従来、寄生ダニの蔓延を補足することが難しく、コロニーの死滅を防ぐのが難しかったのだとか。
そこで、このプロジェクト創設者はミツバチのコロニーの写真をスマートフォンで撮影し、解析してダニの存在とダニに対する耐性を持つハチとを明らかにするアプリを開発することにしたそうです。で、画像から結論を推定する際に利用するのがディープラーニングだそうです。あ~なるほど。このように、人間の判別を支援する技術としてディープラーニングはうってつけですよね。特に、人間が見ても判別困難な事象についてディープラーニングで推論できるようになればインパクトは非常に大きいですね。
この例のように、機械学習などの応用例を最近耳にするようになりましたね。特に、ICT企業の巨人以外の開発者による応用例が増えてきているように思えます。人口知能関連技術が推定等の分野で非常に有効であることが徐々に実証され、裾野が広がってきたと言うことでしょうか。人工知能関連技術は種々の産業に応用可能と思いますが、農業関連では多くの分野に適用可能なのではないでしょうか。熟練の農家には暗黙知がたくさん存在するように思えますので、そのような暗黙知をどんどん機械学習させれば面白いと思います。いずれにしても、どんどん応用分野が広がってほしいものです。AIブームをブームで終わらせないために。
農業分野に限らず、今、世界中で人工知能関連技術の開発が進められていると思います。特許業界に身を置く私としては、開発の初期段階で必ず知的財産戦略を決めておくことをおすすめします。ブームのまっただ中にある技術はものすごい速さで進歩していきますので、一旦走り出すと、開発過程でマイルストーンに達するたびに成果を独占すべきか、開放すべきか熟考するのは事実上不可能のように思えますから。